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債務償還年数とはなんぞや?!

銀行とお付き合いする上で、知っておくべき決算書のポイントで、大切なもののひとつに「債務償還年数」があります。

 

この記事では、債務償還年数をどれくらいの目標値で設定し、対策は何をしたら良いのか解説したいと思います(^o^)

 

債務償還年数

 

1.債務償還年数とは?

債務償還年数を一言でまとめると、『何年で借入金を返済できるの??』という意味です。

 

言葉を分解するとわかりますよね。

・債務=借入金

・償還=返済できる

・年数=どれぐらいの期間で

 

銀行からしては、この年数が「短ければ短いほど良い」ということです。

理由は、銀行からした貸したお金はすぐに返してもらえるような会社の方が、リスクが少ないからです(^o^)

 

ちなみに、リスケ(返済を待ってもらってる)をしてるような会社であれば、この年数が100年とかなっている会社も珍しくありません(笑)

現実味ないですよね。

 

2.債務償還年数の目標値は?!

では、債務償還年数を何年くらいの目標で設定すればよいでしょうか?

 

僕の結論としては、『7年』くらいがイケてると思います(^o^)

難しい場合は、最高でも「10年以下」の年数にしたいところです。

 

理由は、運転資金の返済期間は、長くても7年~10年程度ですし、それ以上になると「会社大丈夫??」と思われるからです。

 

逆に、債務償還年数が3年とか5年と短いと、会社が優秀すぎて、僕の財務コンサルの仕事がなくなりますから、7年くらいの目標にしておきましょう(笑)

 

3.債務償還年数の計算式を確認

では、債務償還年数の計算パターンを3つほど紹介しておきます。

銀行によって計算方法は異なりますが、この3つで計算できていれば、問題ないかと思います。

 

①一般的

    (借入金ー運転資金)

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

 (経常利益+減価償却費ー法人税等)

 

②厳しめ

       (借入金)

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

 (経常利益+減価償却費ー法人税等)

※借入金に、役員借り入れを含めてみるところもある。

 

③緩め

  (借入金ー運転資金ー現預金)

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

 (経常利益+減価償却費ー法人税等)

 

全て分母は同じで、分子が違うだけです。

 

債務償還年数の分母

では、同じ分母から説明しましょう。

分母のイメージは、『1年間で手元にどれだけお金が残るか』です。

 

よって計算式は、経常利益にお金が出ない減価償却をプラスして、税金を差し引いたのが1年間に残るお金と考えています。

 

なぜ経常利益を使うかは、税引き前利益だと突発的な特別利益や損失が計算に含まれてしまうため、利益が上下するからです。

 

債務償還年数の分子

次に、分子の説明です。

分母を簡単に説明すると、『会社が返済しなければいけない借入金』ということです。

 

「一般的」な場合は、銀行などの借入金から運転資金を差し引きます。

運転資金とは、会社が事業を行う上で足りなくなるお金という意味です。

 

詳細はこちらの記事で解説しますのでご確認ください。

 

運転資金とはなんぞや?! | 福岡の税理士|国際税務・海外進出・資金調達をサポートする税理士事務所

運転資金とはなんぞや?! この記事では、会社のお金が足りなくなる原因である「 運転資金 」を解説します。 この運転資金を経営者が意識することで、会社のお金の流れが良くなり、お金が上手に貯まるようになります。 逆に、これを意識しないと、資金繰りがかなり厳しくなりますので、しっかりと管理しましょう! 運転資金を一言で表すと、「 商売するときに、足りなくなるお金 」です。 …

 

そのため運転資金は、「銀行から借りっぱなしにしておく借入金」ということです。

なので、今借りている金額から運転資金を差し引いて、「実際に返済しなければいけない借入金」を分子で計算します。

ここは重要なポイントなのでしっかり理解しておきましょう(^^)

 

「厳しめ」の場合は運転資金を差し引かないで見るところもあります。

この計算だと債務償還年数が長くなるため、あまり良い評価はもらえません。

 

また会社が代表者から借りているお金も含めて借入金と見るところもありますので、しっかり銀行に説明しましょう。

決算書には、「長期借入金」と記載されているのがほとんどなので、銀行にはこのうちいくらは役員からの借り入れですと伝えましょう。

決算書の勘定科目内訳書まで見ない銀行の担当者もいますからね。

 

最後に「緩め」の場合は、借入金から運転資金と現預金も差し引いて計算してくれます。

なので「実質的な借入金がいくらあるか」ということですかね。

 

ここまで差し引いて計算してくれれば、かなり年数も短くなりますので、銀行からは高評価となります。

 

銀行の担当者にどのように計算しているのか?聞いてみるとよいでしょう(^o^)

 

4.銀行に知ってるぞアピールする

ではこの債務償還年数をどう経営に生かすのかを解説します。

 

銀行ごとにこの計算式は多少異なると思いますが、こちらから資料として一般的な債務償還年数で計算して年数を伝えると良いアピールにはなるでしょう。

やはり銀行も、これらの知識がある経営者であれば安心しますからね(^o^)

 

アピールして、借入金が保証協会付き融資であれば、プロパー融資へ切り替えできないか?金利を下げれないか?担保を外せないか?代表者保証を外せないか?しっかり交渉するのです。

 

逆に、債務償還年数が長く、債務超過の場合は、銀行との交渉が全くできませんので、このあたりはしっかり経営者が把握しておくべき数字でしょう。

 

5.債務償還年数の対策

では目標年数と計算式が分かったところで、どうしたら年数を短くでききるのか考えてみましょう。

 

利益を出す

これを言っちゃおしまいよーですが(笑)、実際これが第一優先事項です。

 

やはり利益が出ないと、返済する原資がありません。

そのため会社の利益の構造をしっかり見直す必要があります。

以下でも説明しますので、じっくりご検討ください。

 

京セラを設立した、稲盛和夫さんの言葉をお借りしましょう。

売上ー経費=利益。利益を出すには、売上最大に、経費最小に

当たり前なことですが、これしかないのです。

 

役員報酬を減らす(新しい生活様式)

過去に儲かっていて、社長の給与が工学で、そのお金の感覚で生活されている方がいらっしゃいます。

 

コロナショックではありませんが、儲かっていないのであれば「新しい生活様式に変える」必要があります。

 

一旦生活レベルを上げるとを下げるのは結構きついので、いま儲かっていて急激に生活レベルは上げない方が良いということです。

いつ儲からなくなるか分かりませんからね。

 

借金して高級な自宅を買う、高級な車や時計を買うなどすぐにはしてはいけません。

しかもローンで。

僕も人間だから欲があるので分かりますが、ここが変わらないと会社は一向に良くはなりません。

 

あと知っておいていただきたいのは、中小企業では利益の計算方法が違うということです。

 

基本は、売上ー経費=利益ですが、中小企業ではこの経費の中には、経営者の給与や接待交際費は入っていません!

よって、中小企業の利益計算は、『売上ー経費=利益ー経営者の給与=最終利益』となるのです。

 

そのため、極端な言い方をすれば、会社の利益が出ていなければ、経営者は給与はもらえず、接待交際費なんかもってのほかということなんです。

 

厳しい計算ですが、これくらいの感覚でやっていないと、やはり会社に利益はでず、お金も残らないのです。

 

売上原価を減らす

まずは、大きな売上原価から確認しましょう。

毎月、同じところに注文しているものが、田舎の別の会社だと2-3割のコストダウンすることもあります。

 

大手だから大丈夫というわけではありません。

また漫然と取引していると、コスト感覚がなくなりますので、定期的にお付き合いしている業者を見直し、別の会社から見積もりとることをおすすめします。

 

例えば、売上3億円の会社で、原価を5%改善できたら、1,500万円もの利益が出るのです!

それも、これに伴い固定費などは一切増えませんので、営業利益がそのまま増加するので、かなり良い結果となります。

 

5%といかなくても、3%、1%でも原価を減らすことができれば、売上が大きければ、その分利益額も大きくなりますので、原価が大きい業種などは絶対にやってください!

 

経費を見直す

売り上げ3億以上の会社であれば、細かな経費を社長は把握していないため、無駄に毎年払っているものがあるかと思います。

 

そのため一度、会社の通帳をいちどじっくり眺めてください(*^^*)

 

あと毎月の振り込みで払っているものも、経理担当社から請求書を見せてもらい、社長の目を通して振り込んだ方が良いでしょう。

これを、半年くらいすれば、無駄な経費が分かってきます。

 

〇〇の会費、使ってないクレジットカードの会費、よく分からないリース代やその他保険、ましてや閉鎖している支店のネットや電話代、あまり役に立っていない顧問税理士会の報酬(笑)など多々あるかと思います。

 

塵も積もれば山となります。

 

減価償却を増やす、決算書をうまく作る

この部分は合法的にやりましょう(笑)

 

債務償還年数の計算式でも分かる通り、減価償却が増えればその分返済原資が増えるということになります。

であれば、どうにかして減価償却を増やす知恵を絞りましょう(^^)

 

例えば、中小企業であれば30万円未満のものを買えば一括で経費にできます。

25万円のパソコンを買ったとしましょう。

この経費の科目を消耗品費25満円とするのか、減価償却費25万円にするのかで債務償還年数の金額は変わってきます。

わかりますよね(笑)

 

この辺のことに知恵を絞れば、銀行の評価は高くなり、融資が出やすくなる可能性が高くなります。

しかし、顧問税理士がここまでやってくれるわけではありません。。。。

 

節税をやめる

税金を減らすという事は、利益を減らすということになります。

利益が減ると債務償還年数は長くなりますので、銀行の評価は下がってしまいます。

そのため無理に過度な節税をするのはやめた方が良いでしょう。

 

ひとつの例が「年払いで払う節税保険」です。

これがダメというわけではなく、年払いで数百万円も毎年払い続けるのは、本当にこの先も利益が出るのでしょうか?

 

コロナショックで分かった通り、経済危機や自然災害などいろんな状況がありますので、3年先5年先なんてわかったもんじゃありません。

そのため今年利益が出たからと言って、無理にお金を払って節税をするのはやめた方が良いでしょう。

 

僕自身、年払いの節税保険を払って、数年後に資金繰りが苦しくなり、泣く泣く半分程度の返戻金で解約したお客様は何社も見ています。

だから僕は保険を1度も売った事はありません(^^)

 

節税したい気持ちは分かります。

しかし、節税と資金繰りは相反するときがあります。

その辺りは、十分ご注意ください。

 

お金を増やす(増資など)

これができれば嬉しいですよね。

 

個人資産があれば、資本金を増やしても良いですし、あと会社に貸し付けているお金があればそれを資本金に振り替えても良いでしょう。

これはデットエクイティスワップというやり方がありますので顧問税理士に相談してみましょう。

 

あとコロナの関係で、条件が良い融資を引っ張れば元本返済せずに済みますし、5年ほど元本返済不要の保証協会融資などありますので、これらの融資を積極的に活用すればお金は減りません。

 

また日本政策金融公庫には、「資本性ローン」なるものもあります。

資本性ローンとは、本来は借入金ですが、要件に該当すると、会社の資本金としてみますよというものがあります。

ハードルは高いですが、会社の発展のためにもチャレンジしたいですね!

 

6.最後に

読んでみて分かるように、この債務償還年数を一瞬で短くする事は到底できません(笑)

 

毎年の日々の利益の積み重ねや、経営者の行動によって、少しずつ変わっていくものです。

だから経営者はこれらを頭に入れておく必要があるのです。

 

ぜひ、いまから会社の決算書を引っ張り出して、自社の債務償還年数がどれくらいあるのか、確認してみましょう!!