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海外出張が多い会社は出張旅費規定を作成し、日当・宿泊費・支度料を支給して節税できる!

この記事の要点3行でわかる結論

  • 出張旅費規程に基づいて支給する日当や宿泊費は、その旅行について通常必要であると認められる範囲であれば、受け取る個人に所得税がかかりません。根拠は所得税法9条1項4号で、判定の基準は所得税基本通達9-3が定めています。
  • 判定されるのは「規程があるかどうか」ではなく「金額が通常必要な範囲か」です。所得税基本通達9-3は、役員と使用人の全員を通じてバランスが取れているか、同業種・同規模の他社の水準に照らして相当かを見るとしています。範囲を超える部分は給与になります。
  • 海外出張のために支給する旅費・宿泊費・日当は、原則として消費税の課税仕入れになりません(消費税法基本通達11-2-1の注2)。国内出張分と海外出張分は、勘定科目か補助科目で分けて管理してください。

海外取引がある会社は、社長や営業担当者が現地へ出張する機会が多くなります。円安が続く局面では、航空券もホテルも以前より高くつきます。出張のたびに領収書を集めて精算する手間も、金額が増えるほど重くなります。

そこで使われるのが出張旅費規程です。あらかじめ社内でルールを決め、そのルールに従って日当や宿泊費を支給する仕組みです。規程に基づいて支給される日当は、その旅行について通常必要であると認められる範囲であれば、受け取る個人に所得税がかかりません。

ただし、規程を作れば無条件に税金が減るという話ではありません。判定されるのは金額の妥当性です。実態に見合わない金額を規程に書いても、税務調査で否認されれば、会社と個人の両方で税金が増えます。

この記事では、規程を作って支給する側の立場から、根拠となる条文、金額の決め方、規程に書いておくこと、否認されたときに何が起きるか、そして消費税の扱いを整理します。海外視察や海外渡航の費用がそもそも経費になるかという判定は、別の記事にまとめています。

1. 出張旅費規程がある会社では、何がどう変わるか

先に結論を数字で示します。次のような海外出張を想定します。

  • 2026年11月 社長がシンガポールへ4泊6日で出張し、現地の取引先を訪問した
  • 航空券(国際線・エコノミー)と現地ホテル代の実費 合計340,000円
  • 出張旅費規程では、海外出張の日当を1日8,000円と定めている
規程に基づく日当は、会社の費用になり、受け取る側では課税されない① 規程なし 会社の費用(航空券・ホテルの実費)340,000円② 規程あり 会社の費用(実費 + 日当8,000円 × 6日)388,000円②で本人が受け取る48,000円に対する所得税・住民税0円
日当が「その旅行について通常必要であると認められる」範囲に収まっている場合の話です。範囲を超える部分は給与になります

②では、会社の費用が48,000円増えます。そしてその48,000円を受け取った社長には、所得税も住民税もかかりません。同じ48,000円を役員報酬として増額した場合には所得税・住民税・社会保険料がかかりますから、そこが違いです。

ただし、これは日当8,000円が「その旅行について通常必要であると認められる」範囲に収まっている場合の話です。この範囲を超えた部分は給与になります。判定の基準は次の章で見ていきます。

もうひとつ、実務上の効果があります。日当と宿泊費を定額で支給すれば、現地での領収書を1枚ずつ集めて精算する作業がなくなります。海外の領収書は言語も通貨もまちまちで、精算に時間がかかります。出張の回数が多い会社ほど、この手間の削減が大きく効きます。

2. 日当が課税されない根拠は、所得税法9条1項4号

日当が非課税になる根拠は、所得税法9条1項4号です。条文はこう定めています。

給与所得を有する者が勤務する場所を離れてその職務を遂行するため旅行をし、若しくは転任に伴う転居のための旅行をした場合又は就職若しくは退職をした者若しくは死亡による退職をした者の遺族がこれらに伴う転居のための旅行をした場合に、その旅行に必要な支出に充てるため支給される金品で、その旅行について通常必要であると認められるもの(所得税法9条1項4号)

e-Gov所得税法(9条 非課税所得)

条文が求めているのは「その旅行について通常必要であると認められるもの」であることだけです。規程があることは条件になっていません。逆に言えば、規程があっても金額が通常必要な範囲を超えていれば、その超える部分は非課税になりません。

判定されるのは「規程があるかどうか」ではなく「金額が通常必要な範囲か」出張旅費規程に基づいて支給した日当・宿泊費通常必要な範囲内旅費(会社の費用・本人は非課税)その範囲を超える部分給与(役員なら損金不算入)
規程があっても、金額が通常必要と認められる範囲を超えれば、その超える部分は給与になります(法人税基本通達9-7-6、所得税基本通達9-4)

では「通常必要であると認められる」かどうかは、どう判定するのでしょうか。所得税基本通達9-3が、その考え方を示しています。

法第9条第1項第4号の規定により非課税とされる金品は、同号に規定する旅行をした者に対して使用者等からその旅行に必要な運賃、宿泊料、移転料等の支出に充てるものとして支給される金品のうち、その旅行の目的、目的地、行路若しくは期間の長短、宿泊の要否、旅行者の職務内容及び地位等からみて、その旅行に通常必要とされる費用の支出に充てられると認められる範囲内の金品をいう(所得税基本通達9-3)

国税庁所得税基本通達 法第9条《非課税所得》関係(9-3 非課税とされる旅費の範囲)

旅行の目的、目的地、期間の長短、宿泊の要否、その人の職務内容と地位。これらを見て判断するということです。国内の日帰り出張と、10日間の海外出張で、同じ日当であるはずがない、という当たり前の話が書かれています。

なお、通常必要と認められる範囲を超えた部分がどの所得になるかは、所得税基本通達9-4が定めています。職務を遂行するための旅行であれば、超える部分は給与所得です。

3. 金額の妥当性は「社内のバランス」と「同業他社の水準」で見る

所得税基本通達9-3は、判定に当たって勘案する事項を2つ挙げています。ここが実務上いちばん重要です。

(1) その支給額が、その支給をする使用者等の役員及び使用人の全てを通じて適正なバランスが保たれている基準によって計算されたものであるかどうか。

(2) その支給額が、その支給をする使用者等と同業種、同規模の他の使用者等が一般的に支給している金額に照らして相当と認められるものであるかどうか。

国税庁所得税基本通達9-3(1)(2)

(1)は、社長だけ突出していないか、ということです。役職に応じて金額に差をつけること自体は問題ありません。差の付け方が説明できるかどうかが問われます。役員は従業員の2倍程度、といった水準であれば説明はつきますが、役員だけ10倍という規程は、バランスが保たれているとは言いにくくなります。

(2)は、外から見た水準です。同業種で同じくらいの規模の会社が、一般的にいくら支給しているか。この2つを両方満たしていることが、規程を作るときの目標になります。


やました君

規程を作るときによくある間違いが、「役員の日当は高く、従業員の分は決めていない」というものです。従業員に支給していない規程は、そもそもバランスを見る対象がありません。役職ごとの金額を全員分決めて、実際に全員に支給してください。作っただけで運用されていない規程は、税務調査で必ず指摘されます。

4. 国家公務員の旅費制度は、2025年4月に作り直された

民間企業が規程の水準を考えるとき、参考にされてきたのが国家公務員の旅費です。ただし、この制度は2025年4月1日から新しい内容に変わりました。以前の記事や書籍が引用している「国家公務員等の旅費に関する法律 第39条(支度料)」といった条文は、現在の法律には存在しません。

国家公務員の旅費制度は2025年4月に作り直された日当は宿泊手当へ、支度料は渡航雑費へ改正法の公布2024年5月施行令・省令の整備2024年10月・2025年2月新しい旅費制度の施行2025年4月1日
民間企業の規程を国家公務員の制度に合わせる義務はありませんが、水準の参考にしているなら、内容が変わったことは知っておく必要があります

財務省国家公務員等の旅費制度の改正について

e-Gov国家公務員等の旅費に関する法律

現在の法律は全12条まで縮まり、旅費の種目と内容は施行令に委ねられています。施行令4条が定める種目は、鉄道賃、船賃、航空賃、その他の交通費、宿泊費、包括宿泊費、宿泊手当、転居費、着後滞在費、家族移転費、渡航雑費、死亡手当の12種類です。「日当」も「支度料」も、この一覧にはありません。

e-Gov国家公務員等の旅費に関する法律施行令(令和6年政令第306号)

日当は「宿泊手当」になった

施行令11条は、宿泊手当を「宿泊を伴う旅行に必要な諸雑費に充てるための費用」と定義し、一夜当たりの定額としています。従来の日当が昼食代や目的地内の交通費を含んでいたのに対し、宿泊手当はそれらを外し、宿泊を伴う旅行だけを対象にしています。日帰り出張に対する定額の手当はなくなりました。

財務省広報誌ファイナンス 国家公務員等の旅費制度の見直しについて(政令編)

支度料は「渡航雑費」に統合された

施行令15条の渡航雑費は、予防接種に係る費用、旅券の交付手数料、査証手数料、外貨交換手数料、入出国税などを対象とする実費です。省令はこれに加えて、保険料、医薬品の購入費用、携行品の購入費用、健康診断その他の医療機関での受診費用を挙げています。従来の支度料が定額だったのに対し、渡航雑費は実費です。

実際の金額

国家公務員等の旅費支給規程(財務省令)の別表が、具体的な金額を定めています。2026年9月時点の主なものは次のとおりです。

区分職務の級が10級以下の職員の額(一夜につき)
宿泊手当(本邦・全ての地)2,400円
宿泊手当(アメリカ合衆国・英国・シンガポール・中国など)5,400円
宿泊手当(インド・ベトナムなど)4,800円
宿泊費の基準額(東京都)21,000円
宿泊費の基準額(福岡県)17,000円
宿泊費の基準額(シンガポール)35,000円
宿泊費の基準額(ニューデリー)22,000円

e-Gov国家公務員等の旅費支給規程(別表第二 宿泊費基準額・別表第三 宿泊手当)

宿泊費は定額支給ではなく、基準額を上限とする実費です。宿泊手当のほうは定額ですが、宿泊料に朝食または夕食が含まれている場合は3分の2、朝食と夕食の両方が含まれている場合は3分の1に減額されます。旅行中に自宅に宿泊した場合は支給されません(旅費支給規程14条)。

民間企業がこの制度に合わせる義務はありません。所得税基本通達9-3が見るのは同業種・同規模の他社の水準であって、国家公務員の水準ではないからです。ただ、規程の水準を「国家公務員の旅費を参考にした」と説明してきた会社は、その参考元が変わったことになります。規程の見直し時期に、根拠として何を挙げるかを整理し直してください。

5. 規程には何を書き、どう運用するのか

出張旅費規程に決まった様式はありません。実務で確認されるのは、次の項目がはっきり書かれているかどうかです。

  • 適用範囲。役員と従業員の両方を対象にすること。役員だけの規程は、所得税基本通達9-3(1)のバランスの点で説明が難しくなります。
  • 出張の定義。片道の距離、または勤務地から離れる時間で線を引きます。「勤務地から片道100km以上」「日帰りでも8時間以上」といった書き方です。
  • 国内出張と海外出張の区分。金額が違うのですから、区分の基準も必要です。
  • 役職ごとの日当・宿泊費の金額。役員、部長、課長、一般社員といった区分ごとに定めます。
  • 宿泊費を実費精算とするか、定額支給とするか。実費精算にする場合は上限額を書きます。
  • 交通機関の等級。飛行機のクラスを役職ごとに定めておくと、金額の妥当性を説明しやすくなります。
  • 出張報告書の提出義務。訪問先、面談相手、用件を書かせます。これが業務性の証拠になります。
  • 渡航に伴う実費の扱い。査証(ビザ)の手数料、予防接種、海外旅行保険といった費用を、実費精算とするのか手当に含めるのかを決めておきます。

そして、作った規程のとおりに運用してください。規程では従業員にも支給することになっているのに実際には役員だけ、という状態が最も指摘されやすい形です。支給の記録は旅費精算書と出張報告書で残し、規程の改定履歴も保存しておいてください。

6. 否認されると、会社と個人の両方で税金が増える

金額が通常必要な範囲を超えていると判定された場合、その超える部分は給与になります。法人税基本通達9-7-6は、海外渡航の旅費についてこう定めています。

法人がその役員又は使用人の海外渡航に際して支給する旅費(仕度金を含む。)は、その海外渡航が当該法人の業務の遂行上必要なものであり、かつ、当該渡航のため通常必要と認められる部分の金額に限り、旅費としての法人の経理を認める。したがって、法人の業務の遂行上必要とは認められない海外渡航の旅費の額はもちろん、法人の業務の遂行上必要と認められる海外渡航であってもその旅費の額のうち通常必要と認められる金額を超える部分の金額については、原則として、当該役員又は使用人に対する給与とする。(法人税基本通達9-7-6)

国税庁法人税基本通達 第9章第7節第2款 海外渡航費(9-7-6)

役員に対する給与とされた場合、それが定期同額給与、事前確定届出給与、業績連動給与のいずれにも当たらなければ、会社ではその金額を損金に算入できません。

国税庁No.5211 役員に対する給与(平成29年4月1日以後支給決議分)

金額にすると、次のようになります。宿泊費は別に実費精算しているのに、日当だけ1回50,000円を社長にだけ支給していた、という例です。

宿泊費は実費精算のうえ、日当だけ1回50,000円を支給していた場合社長にだけ支給していた日当(年24回 × 50,000円)1,200,000円会社 役員給与として損金不算入(実効税率30%と仮定)360,000円本人 給与として所得税・住民税(税率30%と仮定)360,000円会社 源泉徴収漏れの本税・不納付加算税・延滞税別途追加で負担する税金720,000円 + 加算税等
同じ支出が会社と個人の両方で課税されます。金額の妥当性を確かめずに規程だけ作ると、この形になります

会社の側では損金にできず法人税が増え、本人の側では給与として所得税・住民税がかかります。同じ支出に、両方で課税されます。

さらに、給与とされた以上は源泉徴収の対象でした。徴収していなければ、会社が本税を納付したうえで、不納付加算税と延滞税がかかります。

国税庁源泉所得税の不納付加算税の取扱いについて(事務運営指針)

国税庁No.9205 延滞税について

規程を作る目的は、税金を減らすことではありません。実態に見合ったルールを決めて、そのとおりに支給し、根拠を説明できる状態にしておくことです。金額の妥当性を確かめずに規程だけ作ると、この形になります。

7. 海外出張の旅費は、原則として課税仕入れにならない

ここからは消費税です。国内出張と海外出張で扱いが違います。

消費税法基本通達11-2-1は、役員または使用人に支給する出張旅費、宿泊費、日当等のうち、その旅行について通常必要であると認められる部分の金額は課税仕入れに係る支払対価に該当する、としています。ただし、注書きで海外出張を明確に除いています。

(注)2 海外出張のために支給する旅費、宿泊費及び日当等は、原則として課税仕入れに係る支払対価に該当しない。(消費税法基本通達11-2-1)

国税庁消費税法基本通達 第11章第2節 課税仕入れの範囲(11-2-1)

国税庁No.6459 出張旅費、宿泊費、日当、通勤手当などの取扱い

理由は、現地のホテル代も現地の移動も、国外で行われる取引だからです。日本の消費税は国内取引にかかるものですから、そこに消費税は含まれていません。

国際線の航空運賃も同じく仕入税額控除の対象になりません。ただし理由が違います。国内と国外にわたって行われる旅客の輸送は輸出免税とされているためです(消費税法7条1項3号)。免除されている以上、支払った運賃に控除できる消費税は含まれていません。

e-Gov消費税法(7条 輸出免税等)

会計処理は、国内出張分と海外出張分が混ざらないようにしておくことが要点です。方法は2つあります。

  • 「海外旅費交通費」という勘定科目を新しく作り、消費税の初期設定を対象外にしておく。
  • 旅費交通費に補助科目やタグを作り、その補助科目の消費税の初期設定を対象外にしておく。

どちらでも構いませんが、決めたら継続してください。海外出張が増える局面では、この設定のありなしで消費税の納税額が変わります。海外取引の経費についての消費税の考え方は、次の記事でまとめています。

8. インボイス制度では、出張旅費をどう扱うのか

国内出張分については、インボイス制度の下でも仕入税額控除が受けられます。従業員は適格請求書発行事業者ではありませんから、本来なら適格請求書を受け取れませんが、特例が用意されています。

国税庁の質疑応答事例は、社員に支給する出張旅費、宿泊費、日当等のうち、その旅行について通常必要であると認められる部分については、一定の事項を記載した帳簿のみの保存で仕入税額控除が認められる、としています。

国税庁質疑応答事例 出張旅費、宿泊費、日当等に係る仕入税額控除の適用要件

この特例について、押さえておく点が3つあります。

  • 「通常必要であると認められる部分」は、所得税基本通達9-3で判定します。つまり、所得税が非課税になる範囲と、帳簿だけで仕入税額控除ができる範囲は一致します。
  • 社内規程の有無や、概算払いか実費精算かは問いません。規程がない会社が実費で払った交通費でも、通常必要と認められるのであれば特例の対象になります。
  • 帳簿には、通常の記載事項に加えて「出張旅費」「宿泊費」など、特例の対象である旨を書く必要があります。ここが抜けると特例が使えません。

国税庁インボイス制度における特例(出張旅費等特例)

もうひとつ、書類の保存があります。航空券をインターネットで予約すれば、eチケットの控えも予約確認も宿泊の請求書もメールやPDFで届きます。こうした電子取引のデータは、電子帳簿保存法により、電子データのまま保存することが必要です。紙に印刷して保存する方法は認められていません。

国税庁電子帳簿等保存制度特設サイト

法人の帳簿書類は、原則として確定申告書の提出期限の翌日から7年間の保存が必要です。青色欠損金が生じた事業年度は10年間になります。

国税庁No.5930 帳簿書類等の保存期間

9. 個人事業主は、自分自身に日当を支給できない

ここは間違いの多いところです。所得税法9条1項4号が非課税としているのは「給与所得を有する者」に支給される金品です。個人事業主本人は給与所得者ではありませんから、この規定の対象になりません。

海外渡航についても、所得税基本通達37-16が次のように定めています。

事業を営む者が自己の海外渡航に際して支出する費用は、その海外渡航が当該事業の遂行上直接必要であると認められる場合に限り、その海外渡航のための交通機関の利用、宿泊等の費用(家事上の経費に属するものを除く。)に充てられたと認められる部分の金額を必要経費に算入する。(所得税基本通達37-16)

国税庁所得税基本通達 法第37条《必要経費》関係〔海外渡航費〕(37-16)

必要経費になるのは、実際に支出した交通費と宿泊費です。定額の日当という考え方はありません。渡し切りの宿泊費も同じで、実費を超える部分は必要経費になりません。

一方、従業員に対しては、個人事業主でも規程に基づいて日当を支給できます。所得税基本通達37-17が、使用人に支給する海外渡航の旅費について、事業の遂行上直接必要であり、かつ通常必要と認められる部分の金額に限り必要経費に算入する、と定めています。規程を作る意味は従業員に対しては残る、ということです。

10. まとめ

  • 日当が非課税になる根拠は所得税法9条1項4号。条件は「その旅行について通常必要であると認められるもの」であることで、規程の有無は条文の要件になっていない。
  • 金額の妥当性は、所得税基本通達9-3の2つの視点で見る。役員と使用人の全員を通じてバランスが保たれているか、同業種・同規模の他社の水準に照らして相当か。
  • 規程は役員と従業員の両方を対象にし、決めたとおりに全員へ支給する。作っただけで運用していない規程は指摘される。
  • 国家公務員の旅費制度は2025年4月1日から新しくなり、日当は宿泊手当に、支度料は渡航雑費(実費)に変わった。旧法39条の支度料を根拠にしている規程は見直しが必要。
  • 通常必要な範囲を超える部分は給与になる。役員給与とされれば会社では損金不算入、本人では所得税・住民税、加えて源泉徴収漏れの加算税と延滞税がかかる。
  • 海外出張のために支給する旅費・宿泊費・日当は、原則として消費税の課税仕入れにならない。国内分と海外分は勘定科目か補助科目で分ける。
  • 国内分は、出張旅費等特例により帳簿のみの保存で仕入税額控除ができる。帳簿に「出張旅費」などと記載することが要件。
  • 個人事業主は自分自身に日当を支給できない。実費のみが必要経費になる。

やました君

規程は一度作って終わりではありません。物価も為替も動きますし、2025年4月には参考にしてきた国家公務員の制度そのものが変わりました。3年に一度は金額を見直し、見直した記録を残してください。「いつ、何を根拠に、いくらに決めたか」が説明できることが、金額の妥当性を支えます。

海外視察や海外渡航の費用がそもそも経費になるかどうか、観光が混じった場合にどう按分するかは、次の記事で詳しく説明しています。

出張旅費規程を作りたい、または今の規程の金額が妥当か確認したい場合

当事務所では、海外取引のある会社の出張旅費規程の作成と見直し、支給額の水準の検討、消費税の区分設定までを支援しています。既存の規程の点検だけのご依頼にも対応しています。ご相談はこちら

よくある質問

出張旅費規程を作れば、日当は非課税になりますか?

規程があることは条文の要件ではありません。所得税法9条1項4号が非課税としているのは「その旅行について通常必要であると認められるもの」で、規程があっても金額がその範囲を超えていれば、超える部分は給与になります。規程は、金額の決め方と運用を説明するための道具だと考えてください。

日当の金額は、どのように決めればよいですか?

所得税基本通達9-3が挙げる2つの視点で決めます。ひとつは、役員と使用人の全てを通じて適正なバランスが保たれている基準によって計算されているか。もうひとつは、同業種・同規模の他の会社が一般的に支給している金額に照らして相当と認められるかです。役員だけを対象にした規程は、前者の点で説明が難しくなります。

海外出張の旅費に、消費税の仕入税額控除は使えますか?

使えません。消費税法基本通達11-2-1の注2が、海外出張のために支給する旅費・宿泊費・日当等は原則として課税仕入れに係る支払対価に該当しないと定めています。現地のホテル代も移動も国外取引だからです。国際線の航空運賃も、国内と国外にわたる旅客輸送が輸出免税とされているため控除できません(消費税法7条1項3号)。

日当が高すぎると判定されると、どうなりますか?

通常必要と認められる金額を超える部分は、その役員または使用人に対する給与になります(法人税基本通達9-7-6)。役員給与とされ、定期同額給与などに当たらなければ会社では損金に算入できません。本人には所得税・住民税がかかり、源泉徴収していなければ会社に不納付加算税と延滞税もかかります。

個人事業主は、自分自身に日当を支給できますか?

できません。所得税法9条1項4号が非課税としているのは給与所得を有する者に支給される金品で、事業主本人は対象外です。必要経費になるのは実際に支出した交通費と宿泊費だけで、定額の日当という考え方はありません(所得税基本通達37-16)。従業員に対しては、個人事業主でも規程に基づいて支給できます。

<注記>この記事は、中小企業の経営者や経理担当者の方に向けて、制度の全体像を分かりやすく説明することを目的としています。細部の要件は省略している箇所があります。支給額が「通常必要であると認められる範囲」に収まるかどうかは、個別の事実関係によって変わります。個別の判断については、顧問税理士または当事務所にご相談ください。記載内容は2026年9月時点の法令等に基づいています。