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法人設立1期目に、輸出売上の消費税還付ができる方法は?

この記事の要点3行でわかる結論

  • 設立1期目・2期目は基準期間がないため原則として免税事業者で、輸出売上があっても消費税の還付は受けられません。
  • 「消費税課税事業者選択届出書」を設立1期目の末日までに提出すれば、設立日にさかのぼって課税事業者となり、1期目から還付を受けられます。
  • 選択すると2年間はやめられず、1期目が12か月未満なら実質3期目まで課税事業者です。輸出が減ったときの納税リスクと、やめる届出のタイミングまで設計してから提出してください。

法人を設立した1期目と2期目は、原則として消費税を納める義務がありません。その代わり、輸出売上があっても還付を受ける権利もありません。輸出専門で立ち上げた会社にとっては、国内で支払った消費税がそのまま費用になり、小規模でも無視できない金額です。

この記事では、設立1期目から輸出売上の消費税還付を受ける方法と、その届出を出したあとに気をつけるべき「2年縛り」、そしてやめる届出をいつ出すべきかを、事例を使って説明します。

1. 設立1期目・2期目は、なぜ免税事業者なのか

消費税の納税義務は、2年前の事業年度(基準期間)の課税売上高が1,000万円を超えるかどうかで判定します。設立したばかりの法人には1期目・2期目の基準期間がないため、原則として免税事業者です。

ただし、次の場合は基準期間がなくても課税事業者になります。

  • 事業年度開始日の資本金が1,000万円以上の法人(新設法人)
  • 特定新規設立法人に該当する法人
  • 2期目について、1期目の開始から6か月間(特定期間)の課税売上高が1,000万円を超える場合。課税売上高に代えて給与等支払額で判定することもできます
  • 適格請求書発行事業者(インボイス発行事業者)の登録を受けている場合

国税庁No.6501 納税義務の免除

免税事業者は消費税の申告をしないため、支払った消費税を差し引いてマイナス分を返してもらう手続き自体がありません。納める義務がなければ、還付を受ける権利もないということです。免税事業者と還付の関係は、次の記事で詳しく説明しています。

2. 設立1期目から還付を受けるにはどうすればよいか

免税事業者でも、「消費税課税事業者選択届出書」を税務署に提出すれば、自ら課税事業者になれます。課税事業者になれば申告義務が生じ、同時に還付を受ける権利も得られます。

この届出書は、通常は「課税事業者になりたい事業年度が始まる日の前日まで」に提出します。しかし設立1期目の会社にとって「前日」は設立前であり、提出しようがありません。そこで、事業を開始した事業年度については、その事業年度の末日までに提出すれば、その事業年度の初日(設立日)から課税事業者になれると定められています。

国税庁消費税課税事業者選択届出手続

国税庁No.6629 消費税の各種届出書

事例で確認します。

<事例1> 2026年1月16日に法人を設立、12月決算。1期目は2026年1月16日から12月31日まで。

事例1:設立1期目は、期末までに提出すれば設立日にさかのぼる1期目の末日までに出せば設立日から課税事業者法人設立2026年1月16日届出書の提出期限2026年12月31日2期目2027年1月1日〜
通常は「適用したい事業年度の前日まで」ですが、設立事業年度だけはその事業年度中の提出で間に合います

この会社は、2026年12月31日までに課税事業者選択届出書を提出すれば、1期目から課税事業者になります。1期目に輸出売上があれば、その期の還付を受けられます。期末が土日祝日でも期限は延びないので、余裕をもって提出してください。


やました君

設立時から輸出を予定している会社は、法人設立届出書と一緒にこの届出書を出してしまうのが確実です。「1期目の決算が近づいてから考える」と、期末の慌ただしさの中で出し忘れる例を見てきました。

インボイス登録で課税事業者になった場合

2023年10月のインボイス制度開始後は、適格請求書発行事業者の登録によって課税事業者になる新設法人も増えました。登録でも還付を受ける立場にはなれますが、次の点に注意が必要です。

  • 免税事業者から登録した小規模事業者向けの「2割特例」は、預かった消費税の2割を納める方式で、還付は生じません。輸出売上がある期は、本則課税で申告してください。2割特例は申告のたびに使うかどうかを選べます。
  • 2割特例を使える期間は、2026年9月30日を含む課税期間までです。
  • 輸出免税売上しかない会社には、適格請求書を交付する義務はありません。登録は還付の要件ではなく、還付の要件はあくまで「課税事業者であること」です。
  • 仕入側では、国内の仕入先から受け取った適格請求書の保存が、消費税を差し引く要件です。

国税庁2割特例(インボイス発行事業者となる小規模事業者に対する負担軽減措置)の概要

国税庁適格請求書等保存方式に関するQ&A(問23 輸出免税取引と交付義務)

3. 課税事業者を選ぶと、いつまでやめられないのか

課税事業者選択届出書には「2年縛り」があります。やめるには「消費税課税事業者選択不適用届出書」を提出しますが、この届出書は、課税事業者になった日から2年を経過する日の属する事業年度に入ってからでないと提出できません。そして効力が生じるのは、提出した事業年度の翌事業年度からです。

国税庁消費税課税事業者選択不適用届出手続

事例1の会社で数えてみます。課税事業者になった日は設立日の2026年1月16日、2年を経過する日は2028年1月15日です。この日が属するのは3期目(2028年1月〜12月)なので、不適用届出書を出せるのは2028年に入ってから、免税に戻れるのは早くても4期目の2029年からです。

事例1の会社の「2年縛り」は、実質3期目まで続く2年縛り:不適用届出書を出せない3期目中に提出 → 翌期から免税設立日から課税事業者2026年1月16日2年を経過する日2028年1月15日免税に戻れる最短日2029年1月1日
2年を経過する日(2028年1月15日)が属する3期目に入ってから不適用届出書を出せます。効力は翌期の2029年からです

「2年縛り」と呼ばれていますが、設立1期目が12か月未満の会社では、1期目・2期目・3期目の3期分が課税事業者になります。届出を出す前に、この期間中の国内売上の見込みと納税額を試算してください。

2年縛りの間に輸出売上が減り、国内売上が増えた場合はどうなるでしょうか。届出を出していなければ免税だったはずの期に、「必要のなかった消費税」を納めることになります。輸出還付を受ける権利と引き換えに、納税の義務も引き受けているということです。

4. やめる届出は、出すべきか出さないべきか

3期目に入ったら、不適用届出書を出すかどうかを判断します。出すべきかどうかは、輸出が続くか、売上規模がどうなるかで決まります。事例1の会社を前提に、2つのケースで比べます。

ケース2:輸出が続き、売上が伸びるケース3:国内売上に転換し、小規模のまま
1期目(2026年)輸出売上 800万円輸出売上 800万円
2期目(2027年)輸出売上 2,000万円国内売上 900万円
3期目(2028年)輸出売上 5,000万円国内売上 1,200万円
4期目(2029年)の判定基準期間(2期目)2,000万円 > 1,000万円 → 課税事業者基準期間(2期目)900万円 ≦ 1,000万円 → 届出があれば免税に戻れる
不適用届出書出さない。出しても4期目は課税事業者のままで、還付も続く3期目中に出す。出さないと4期目も課税事業者のままで、国内売上の消費税を納め続ける

ケース2のように輸出が続いて売上が伸びている会社は、不適用届出書を出す必要がありません。基準期間の課税売上高が1,000万円を超えていれば、届出の有無にかかわらず課税事業者であり、還付も受け続けられます。逆に、将来売上が落ちた期に届出の効力で免税に戻ってしまうと、その期の還付が受けられなくなります。

ケース3のように輸出をやめて国内売上に転換し、規模も小さいままなら、3期目中に不適用届出書を出して4期目から免税に戻るのが合理的です。ただし、不適用届出書を出していても、特定期間(3期目の上半期)の課税売上高が1,000万円を超えた場合は、4期目は課税事業者になります。

なお、輸出免税売上も「課税売上高」に含めて判定します。輸出だけの会社でも、売上が1,000万円を超えれば2年後には自動的に課税事業者です。

5. 選択中に資産を買うと、縛りはどう延びるのか

課税事業者を選択している期間中に一定の資産を買うと、縛りが2年から3年に延びます。設立直後は設備投資や大きな仕入が集中しやすいので、あらかじめ確認してください。

ルール内容
調整対象固定資産の3年縛り課税事業者となった日から2年を経過する日までの間に開始した事業年度中に、税抜100万円以上の固定資産を本則課税で取得すると、その事業年度の初日から原則3年間は免税事業者に戻れず、簡易課税も選べない
高額特定資産の3年縛り一取引単位で税抜1,000万円以上の棚卸資産や固定資産を本則課税で取得した場合も、同様に3年間は免税・簡易課税に戻れない
金・白金地金の3年縛り2024年4月以降、金・白金の地金を年間で税抜200万円以上仕入れた場合も、3年間は免税・簡易課税に戻れない

国税庁No.6502 高額特定資産を取得した場合等の納税義務の免除等の特例

国税庁消費税法改正のお知らせ(令和6年4月)

また、輸出免税の証明書類にも改正があります。2026年10月1日以後は、代金を現金等で受け取った輸出取引について、輸出許可書などに加えて輸入国側の輸入許可書等の保存が必要になります。設立直後の小口輸出は現金決済になりやすいため、決済方法と書類の保存方法を最初に設計しておいてください。

財務省令和8年度税制改正の大綱(消費課税)


やました君

設立1期目の届出は「出すか出さないか」より「出したあと3期分をどう乗り切るか」で結果が決まります。輸出比率・国内売上・設備投資の3つを3年分並べて、還付額と納税額を先に見える化してから判断してください。

6. まとめ

  • 設立1期目・2期目は基準期間がなく原則免税。免税事業者は輸出売上があっても還付を受けられない。
  • 「消費税課税事業者選択届出書」を1期目の末日までに出せば、設立日にさかのぼって課税事業者になり、1期目から還付を受けられる。
  • インボイス登録でも課税事業者にはなるが、2割特例で申告すると還付はない。輸出がある期は本則課税で申告する。
  • 選択すると2年縛り。1期目が12か月未満なら実質3期分は課税事業者。100万円以上の固定資産や1,000万円以上の資産を買うと3年に延びる。
  • 輸出が続き売上が伸びるなら不適用届出書は出さない。国内に転換して小規模のままなら、3期目中に出して翌期から免税に戻る。

設立したばかりで、課税事業者を選択すべきか迷っている場合

当事務所では、設立から3期分の還付見込額と納税額を並べて試算したうえで、届出の要否と、やめる届出のタイミングまでご提案しています。消費税還付のご相談はこちら

よくある質問

設立1期目でも輸出売上の消費税還付は受けられますか?

はい。「消費税課税事業者選択届出書」を設立1期目の末日までに提出すれば、設立日にさかのぼって課税事業者となり、1期目の輸出売上から還付を受けられます。届出を出さなければ、1期目・2期目は原則として免税事業者のままで、還付は受けられません。

課税事業者選択届出書は設立1期目のいつまでに出しますか?

設立事業年度の末日までです。2026年1月16日設立の12月決算法人なら、2026年12月31日が期限になります。期末が土日祝日でも期限は延びないため、法人設立届出書と一緒に提出しておくのが確実です。

資本金1,000万円未満の新設法人は必ず免税事業者ですか?

いいえ。特定新規設立法人に該当する場合、2期目について1期目の開始から6か月間(特定期間)の課税売上高が1,000万円を超える場合、適格請求書発行事業者の登録を受けている場合は、基準期間がなくても課税事業者になります。

設立1期目に課税事業者を選ぶと、何期分が課税事業者になりますか?

2年縛りがあるため、設立1期目が12か月未満の会社では1期目・2期目・3期目の3期分が課税事業者になります。不適用届出書を出せるのは2年を経過する日の属する事業年度に入ってからで、効力が生じるのは翌事業年度からです。

やめる届出(不適用届出書)は出したほうがよいですか?

輸出が続いて売上が伸びるなら出す必要はありません。基準期間の課税売上高が1,000万円を超えていれば届出の有無にかかわらず課税事業者で、還付も続きます。国内売上に転換して小規模のままなら、3期目中に出して4期目から免税に戻すのが合理的です。

<注記>この記事は、中小企業の経営者や経理担当者の方に向けて、制度の全体像を分かりやすく説明することを目的としています。細部の要件は省略している箇所があります。個別の判断については、顧問税理士または当事務所にご相談ください。記載内容は2026年9月時点の法令等に基づいています。