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貿易をしている会社は「輸出売上の計上時期」の間違いが税務調査で狙われる!

この記事の要点3行でわかる結論

  • 輸出売上の計上時期は会社ごとに判断が分かれるため、税務調査では決算期をまたぐ取引が重点的に確認されます。指摘されると、漏れていた売上から対応する原価を差し引いた利益に法人税等がかかります。
  • 期ズレの本税は、翌期の税額が同額減ることでいずれ通算されます。しかし過少申告加算税と延滞税は戻ってきません。上乗せされたこの部分だけが純粋な持ち出しになります。
  • 重加算税の割合は、過少申告加算税に代えて課される場合が35%、無申告加算税に代えて課される場合が40%です。ただし課されるのは事実の隠蔽または仮装があった場合に限られます。

貿易を行っている会社の税務調査で、ほぼ必ず確認される項目があります。輸出売上をいつの期に計上したか、という点です。

国内販売なら納品書の日付で決まりますが、輸出は出荷から相手国への到着まで数週間かかり、その間に決算日をまたぐことがあります。しかも計上時期の候補が複数あり、どれを選ぶかは会社に委ねられています。判断が分かれる論点は、調査で見られます。

この記事では、計上時期を間違えたときに実際に何が起きるのかを、金額を追いながら整理します。追徴されるのはいくらか、加算税と延滞税はどの割合でかかるのか、重加算税はどういう場合に課されるのか。どの基準を選べばよいかという話は、別の記事にまとめています。

1. 税務調査で狙われるのは「決算期をまたぐ売上」

税務調査で指摘される項目は、大きく分けると2つしかありません。売上が漏れていないか、そして経費が過大でないか、です。どちらも見つかれば利益が増え、追徴の対象になります。

このうち輸出を行う会社で最も指摘が多いのが、売上の計上時期です。理由は単純で、計上時期の選択肢が複数あるからです。法人税基本通達2-1-2は、棚卸資産の引渡しの日として、出荷した日・船積みをした日・相手方に着荷した日・相手方が検収した日・相手方において使用収益ができることとなった日を例示し、そのうち「合理的であると認められる日のうち法人が継続してその収益計上を行うこととしている日」によると定めています。

国税庁法人税基本通達2-1-2 棚卸資産の引渡しの日の判定

つまり、会社が選んだ基準が正しく運用されているかどうかが問われます。調査官が見るのは次の2点です。

  • 社内で決めた基準どおりに処理されているか。船積日基準を採用しているのに、実際には請求書の発行日や入金日で計上している、という食い違いです。
  • 決算日の前後で処理が変わっていないか。期末近くの取引だけ計上が翌期に回っていれば、意図の有無にかかわらず説明を求められます。

期の途中の取引は、多少ずれても同じ事業年度に収まるため、税額に影響しません。調査で問題になるのは、決算日をまたぐ取引だけです。

2. 事例:船積みは3月30日、船荷証券は4月3日

具体的な数字で見ていきます。次のような会社を想定します。

  • 3月末決算の法人。輸出売上の計上基準は船積日基準と社内で決めている
  • 2026年3月30日 500万円分の商品を船積みした
  • 2026年3月31日 決算日
  • 2026年4月3日 船荷証券(B/L)が作成された
  • この商品の原価は300万円
  • 2026年5月31日 2026年3月期の法人税の申告と納付を済ませた

ところが経理では、船荷証券の日付を見て2026年4月3日に売上を計上していました。船積日基準を採用しているのですから、正しくは2026年3月30日、つまり2026年3月期の売上です。

船積日基準なのに、船荷証券の日付で計上してしまった例本来はこの期の売上誤って翌期の売上にしていた船積み2026年3月30日決算日2026年3月31日船荷証券の作成2026年4月3日申告・納付2026年5月31日税務調査で指摘2027年5月
4日の差で決算期をまたぎます。金額の大小にかかわらず、この4日が調査の対象になります

この状態で2027年5月に税務調査を受け、指摘されたとします。

なお、船荷証券の作成日を計上基準にすること自体は、それを社内ルールとして決めて継続していれば選択肢のひとつです。問題なのは、決めた基準と実際の処理がずれていることです。

3. 増えるのは「売上」ではなく「売上 − 原価」

売上500万円が漏れていた、と聞くと500万円に課税されるように思えますが、そうではありません。売上を計上していないということは、その商品の原価も落としていない可能性が高いからです。多くの場合、期末の棚卸資産に300万円が残っています。

課税されるのは「売上」ではなく「売上 − 原価」漏れていた輸出売上5,000,000円対応する売上原価(棚卸資産に残っていた分)3,000,000円増える所得 = 5,000,000円 − 3,000,000円2,000,000円追加の法人税等(実効税率を30%と仮定)600,000円
漏れていた売上500万円の全額に課税されるわけではありません。対応する原価も同じ期に落とします

したがって、2026年3月期の所得が200万円増え、法人税等の実効税率を30%と仮定すれば追加の本税は約60万円です。

ここで必ず確認していただきたいことがあります。売上だけを指摘され、対応する原価が調整されていないケースがあるという点です。船積みが済んでいる以上、その商品は倉庫にありません。売上を当期に計上するなら、原価も当期に落とすのが筋です。指摘を受けたときは、原価の側がどう処理されているかを必ず確認してください。


やました君

逆のパターンもあります。船積みが済んで原価だけは落としているのに、売上の計上を忘れているという状態です。この場合は棚卸資産が減っているだけなので、期末残高を見ても気づきにくくなります。決算前に、出荷済みで売上未計上のものがないかを、出荷記録の側から確認してください。

4. 本税はいずれ精算される。戻ってこないのは加算税と延滞税

期ズレの特徴は、増える期があれば必ず減る期があることです。この事例では2026年3月期の所得が200万円増える一方、誤って計上していた2027年3月期の所得は200万円減ります。本税だけを見れば、2期を通算すればゼロです。

ただし、自動的に戻るわけではありません。減る側の期については、更正の請求や税務署による減額更正といった手続が必要です。更正の請求ができる期間は、原則として法定申告期限から5年です。

国税庁更正の請求期間の延長等について

国税庁C1-12 法人税及び地方法人税の確定申告に係る税額等についての更正の請求

そして、通算されないものが2つあります。過少申告加算税と延滞税です。

本税は同じでも、期がずれると76,800円多く払う① 正しく2026年3月期に計上 法人税等600,000円② 翌期にずれて調査で指摘 本税600,000円 + 過少申告加算税(本税の10%)60,000円 + 延滞税(1年分・年2.8%で計算)16,800円②と①の差 = 戻ってこない上乗せ76,800円
本税600,000円は翌期の税額が減ることで通算されます。上乗せされた加算税と延滞税だけが純粋な持ち出しです

加算税の計算は次のとおりです。調査によって更正があるべきことを予知した後の修正申告ですから、過少申告加算税の割合は10%です。新たに納める税金60万円が、当初の申告納税額と50万円のいずれか多い額を超えていなければ、全額が10%で計算されます。ここでは当初の申告納税額が60万円を超えていたものとして、60万円 × 10% = 6万円としました。

延滞税は、法定納期限の翌日から完納の日までの日数に応じてかかります。この事例では2026年6月1日から、修正申告と納付を行った2027年5月31日までの365日分です。修正申告の場合、延滞税の割合を分ける「納期限」はその申告書を提出した日になりますので、提出後すぐに納付すれば、この期間はすべて低いほうの割合で計算されます。2026年中の割合である年2.8%がそのまま続いたと仮定すると、60万円 × 2.8% = 16,800円です。

国税庁No.9205 延滞税について

本税60万円は最終的に通算されますが、この76,800円は戻ってきません。加えて、法人住民税・法人事業税にも同じように延滞金や加算金がかかります。金額そのものより、「きちんと確認していれば払わなくてよかったお金」であることが問題です。

5. 加算税と延滞税は、何パーセントかかるのか

割合は国税通則法で決まっています。2026年9月時点の内容を整理すると、次のとおりです。

過少申告加算税

修正申告等の時期割合
調査の通知を受ける前(更正を予知していない)かからない
調査の通知の後、更正を予知する前5%(※の部分は10%)
更正を予知した後、または税務署の更正による10%(※の部分は15%)

※は、新たに納める税金のうち、期限内申告税額と50万円のいずれか多い額を超える部分です。

無申告加算税

期限後申告等の時期割合
法定申告期限の翌日から、調査の通知を受ける前まで5%
調査の通知の後、決定を予知する前10%(50万円超の部分15%、300万円超の部分25%)
決定を予知した後、または税務署の決定による15%(50万円超の部分20%、300万円超の部分30%)

重加算税

区分割合過去5年以内に同じ税目で無申告加算税・重加算税を課されている場合
過少申告加算税に代えて課される場合35%45%
無申告加算税に代えて課される場合40%50%

延滞税(2026年)

期間割合
納期限の翌日から2か月を経過する日まで年2.8%
納期限の翌日から2か月を経過した日以後年9.1%

国税庁加算税制度(国税通則法)の改正のあらまし

国税庁No.2026 確定申告を間違えたとき

国税庁No.2024 確定申告を忘れたとき

国税庁No.9205 延滞税について

この表から読み取っていただきたいのは、調査の通知を受ける前に自分で気づいて修正申告すれば、過少申告加算税はかからないという点です。延滞税は残りますが、加算税の負担はゼロになります。決算のたびに期末前後の輸出取引を確認する価値は、ここにあります。

なお、令和6年1月1日以後に法定申告期限が到来する国税については、調査の際に帳簿の提示等を求められて応じなかった場合や、記載が本来の金額から大きく不足している場合に、過少申告加算税・無申告加算税が5%または10%加重される措置も設けられています。

6. 重加算税は「隠蔽・仮装」があった場合に限られる

加算税のなかで、割合が突出して重いのが重加算税です。国税通則法68条は、課税標準等または税額等の計算の基礎となるべき事実の全部または一部を隠蔽し、または仮装した場合に課すと定めています。

重加算税の割合は、過少申告か無申告かで違う重加算税(隠蔽・仮装があった場合)35%過少申告加算税に代えて課される場合40%無申告加算税に代えて課される場合
過去5年以内に同じ税目で無申告加算税または重加算税を課されていると、それぞれ45%・50%に加重されます

割合を正確に書き分けると、次のようになります。

  • 過少申告加算税に代えて課される場合は35%。申告はしていたが、隠蔽・仮装によって税額が過少になっていた場合です。
  • 無申告加算税に代えて課される場合は40%。申告そのものをしていなかった場合で、過少申告のケースより5ポイント重くなります。
  • 源泉所得税について、不納付加算税に代えて徴収される場合も35%です。
  • 上の割合には加重措置があります。期限後申告等があった日の前日から起算して5年前の日までの間に、同じ税目について無申告加算税(更正・決定を予知した後に課されたものに限ります)または重加算税を課されたことがあるときは、それぞれ10%が加算されて45%・50%になります。この加重措置は、平成29年1月1日以後に法定申告期限等が到来する国税に適用されます。

国税庁加算税制度(国税通則法)の改正のあらまし(加重措置の表)

重要なのは割合そのものより、課される要件です。条文が求めているのは事実の隠蔽または仮装であり、単に計上時期を間違えたことだけでは要件を満たしません。国税庁も、法人税の重加算税について事務運営指針を公表し、どのような行為が隠蔽・仮装に当たるかを例示しています。

国税庁法人税の重加算税の取扱いについて(事務運営指針)

もっとも、隠蔽・仮装があったかどうかは事実認定の問題です。船積書類の日付を書き換えていた、期末近くの出荷分だけ意図的に翌期の伝票にしていた、といった事情があれば評価は変わります。逆に、社内の計上基準そのものがあいまいで、担当者が書類の日付を取り違えていたにすぎないのであれば、指摘の内容と根拠を確認したうえで対応を検討する余地があります。


やました君

調査で重加算税を示唆されたときに、その場で結論を出す必要はありません。どの事実をもって隠蔽または仮装と評価しているのかを、書面で示してもらってください。判断に納得できない場合は、他の税理士にセカンドオピニオンを求めるという選択肢もあります。

7. 消費税には、どのように波及するのか

輸出売上は消費税が免除されますので、計上時期がずれても納める消費税額は変わらないように見えます。しかし、影響は3か所に出ます。

  • 免税売上高の期がずれる。輸出免税売上は課税売上割合の計算に入りますし、申告書にも記載します。金額が誤っていれば、消費税の申告書も誤りになります。
  • 売上原価に含まれる仕入税額控除の期がずれる可能性がある。国内で仕入れた商品を輸出する場合、仕入時に消費税を負担しています。輸出売上が多い会社は消費税が還付になることが多く、その還付の帰属期がずれます。
  • 輸出免税の証明書類の保存が改めて確認される。売上の計上時期を是正するということは、その取引の書類一式を調査官が見るということです。輸出許可書などの証明書類が保存されていなければ、免税そのものが認められません。

消費税の売上計上時期についても、法人税と同じ枠組みが置かれています。消費税法基本通達9-1-1は棚卸資産の譲渡を行った日をその引渡しのあった日とし、9-1-2が引渡しの日の判定を定めています。法人税と消費税で別の日を使う理由はありませんので、同じ日にそろえてください。

国税庁消費税法基本通達9-1-1、9-1-2

国税庁No.6551 輸出取引の免税

8. 決算月の前後1〜2か月を重点的に確認する

ここまでの内容は、決算前の確認でほとんど防げます。当事務所では、輸出売上のある関与先について、決算月の前後1〜2か月の取引を金額の大きい順に並べ、次の3点を突き合わせています。

  1. 社内で決めた計上基準の書類の日付と、会計上の計上日が一致しているか。船積日基準なら船積書類、通関日基準なら輸出許可通知書の許可年月日です。
  2. 売上と原価が同じ期に入っているか。出荷済みの在庫が期末棚卸に残っていないか、逆に原価だけ落ちていないかを確認します。
  3. 輸出免税の証明書類がそろっているか。売上計上の根拠と免税の証明は同じ書類でまかなえることが多いので、案件ごとにまとめて保管します。

法人の帳簿書類は、原則として確定申告書の提出期限の翌日から7年間の保存が必要です。青色欠損金が生じた事業年度は10年間になります。

国税庁No.5930 帳簿書類等の保存期間

あわせて、外貨建ての円換算をどのレートで行うかも社内で決めておいてください。計上日が正しくても、換算レートが期ごとに変わっていれば、同じように説明を求められます。

9. まとめ

  • 輸出売上の計上時期は判断が分かれるため、税務調査では決算期をまたぐ取引が重点的に確認される。見られるのは「決めた基準どおりに処理されているか」。
  • 指摘されて増えるのは「漏れていた売上 − 対応する原価」の利益。売上だけが調整されていないか、原価の側も必ず確認する。
  • 期ズレの本税は、減る期と通算すれば精算される。ただし更正の請求などの手続が必要で、期間は原則5年。
  • 戻ってこないのは過少申告加算税と延滞税。調査の通知を受ける前に自分で修正申告すれば、過少申告加算税はかからない。
  • 重加算税の割合は、過少申告加算税に代えて課される場合が35%、無申告加算税に代えて課される場合が40%。過去5年以内の繰り返しがあれば45%・50%に加重される。
  • 重加算税が課されるのは、事実を隠蔽または仮装した場合に限られる。計上時期の誤りというだけでは要件を満たさない。
  • 消費税の免税売上高、還付の帰属期、証明書類の保存にも同時に影響が出る。

どの基準を選ぶべきかについては、次の記事で詳しく説明しています。

輸出売上の計上時期に不安がある、または税務調査で指摘を受けている場合

当事務所では、貿易取引の売上計上ルールの整備、過去分の点検、消費税の還付までを通して支援しています。調査対応中のご相談にも対応しています。消費税還付・輸出取引のご相談はこちら

よくある質問

輸出売上の計上時期を間違えると、いくら追徴されますか?

漏れていた売上の全額ではなく、そこから対応する原価を差し引いた利益に課税されます。売上500万円・原価300万円が翌期にずれていた場合、増える所得は200万円で、実効税率を30%と仮定した本税は約60万円です。売上だけが指摘され原価が調整されていないことがあるので、原価の側の処理を必ず確認してください。

期ズレを指摘されたとき、翌期の税金は戻ってきますか?

本税は最終的に通算されますが、自動的には戻りません。誤って計上していた期については、更正の請求や税務署による減額更正といった手続が必要です。更正の請求ができる期間は、原則として法定申告期限から5年です。

過少申告加算税は何パーセントかかりますか?

調査によって更正があるべきことを予知した後の修正申告なら10%です(期限内申告税額と50万円のいずれか多い額を超える部分は15%)。調査の通知の後で予知する前なら5%、調査の通知を受ける前に自分で気づいて修正申告すればかかりません。

計上時期を間違えただけで重加算税になりますか?

なりません。国税通則法68条が求めているのは事実の隠蔽または仮装であり、単に計上時期を間違えたことだけでは要件を満たしません。割合は、過少申告加算税に代えて課される場合が35%、無申告加算税に代えて課される場合が40%です。過去5年以内に同じ税目で課されていると、それぞれ45%・50%に加重されます。

輸出売上は免税なのに、消費税にも影響がありますか?

あります。免税売上高の帰属期がずれると課税売上割合と申告書の記載が誤りになり、輸出が多い会社では消費税の還付の帰属期もずれます。さらに、計上時期を是正するとその取引の書類一式が確認されるため、輸出許可書などの証明書類が保存されていなければ免税そのものが認められません。

<注記>この記事は、中小企業の経営者や経理担当者の方に向けて、制度の全体像を分かりやすく説明することを目的としています。細部の要件は省略している箇所があります。加算税が課されるかどうか、その割合がどうなるかは個別の事実関係によって変わります。個別の判断については、顧問税理士または当事務所にご相談ください。記載内容は2026年9月時点の法令等に基づいています。