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輸出売上はいつの日に売上を計上するのか?
今回は『日本から商品を輸出するとき、売上をいつの日に処理するか?!』を学びましょう(^o^)/
1.売上の計上時期が大事
簿記の仕訳は国内で売ろうが、海外に売ろうが変わりありません。
売掛金 100万円 / 売上 100万円
ですよね(*^^*) ただ国内と海外が違うのは以下のふたつです。
◆いくらの円で計上するのか?
◆いつ取引を計上するのか?
前者の「いくらの円で計上するのか?」はこちらの記事で説明していますので、ご参照ください。今回は後者の記事です。
売上をいつ計上するのかは、会社の決算や税金の計算にとって非常に大切なことです。
例えば3月末決算の会社が、輸出売上1,000万円を「3月」に計上するのと、「4月」に計上するのでは天と地ほどの違いがあります。言い過ぎですかね(笑)
これが税務的には3月に売上を計上する必要があったのに、会社の方ではきちんと把握しておらず、4月に計上して税務調査で「300万円以上の法人税が追徴された!」となれば、経営者もビックリ仰天でしょう・・・。
そのため、貿易業で「輸出売上」が多い会社は、売上の計上時期はキチンと理解しておきましょう!!
2.ではいつ売上を計上するのか?
税務会計的には、以下の5つがあります。
①出荷基準
②通関基準
③船積日基準
④船荷証券等作成日基準
⑤揚地条件受渡日基準
ひとつずつ解説していきましょう(^o^)/
①出荷基準
これは商品を会社の倉庫や工場から「出荷した時点」で売上を計上する基準となります。
船や飛行機に乗せなくても、日本国内の会社から出た時点で売上を計上することになります。取引としては一番簡単な方法となりますが、税金的な部分では一番不利になります。例えば、以下の事例で考えてみましょう。
<前提条件>
・3月末決算の会社
・3月30日にアメリカへ商品を出荷し港へ
・4月3日に船荷証券などの書類を作成
・5月5日にアメリカへ到着し、お客さんの手元へ届く
といった場合であればどうなるでしょうか?以下の図が流れです。
会社が「1.出荷基準」を採用していれば、3月30日に売上を計上することになります。そのため、今回の3月31日の決算に含まれますので、その分の税金を5月31日に納税することとなります。
3/31 売掛金 1,000万円 / 売上 1,000万円
それが、1,000万円の売上で、原価が30%の300万円であれば、その輸出売上の利益は、売上1,000万円ー原価300万円=利益700万円となります。
そして、これに法人税が課税されますので、ザックリと法人税率30%と考えても、利益700万円×30%=210万円の法人税を、2ヶ月後の5月末には納税することとなります。
これってまあ当たり前のように思いますが、ここでひとつ問題があります。この商品代金は2ヶ月後の5月末まできちんと入金されるのでしょうか?
海外の取引になると、LC決済などで取引するので安全なこともありますが、この出荷基準はまだ3月末の段階では、船にも乗せていませんし、相手に商品も到着していません。この商品が無事に着くかどうかも分かりません…..
また、信用状無しの取引であればなおさらです。入金すら分かりません。
しかし、出荷基準で売上を計上していれば、これらのリスクとは無関係に税金を払う必要があるのです。これは経営者として恐ろしいことだと思いませんか?!
僕の中では、『代金を回収してしまってから売上だ!』という感覚がありますので、こんな恐ろしい処理はできません。そのため出荷基準で売上を計上するのは考えないで楽ですが、会社の税金や財務戦略上ではかなり不利になります。
どの処理が良いのかは後述しますが、それが手間がかかるかという訳ではありません。会社で書類の整備をきちんとし、経理のルールを作ってしまえば、あとは流れ作業でできます。
②通関基準
これは「通関された日」に売上を計上する方法です。通関された日とは、輸出手続きが完了した日となります。日付けは、輸出許可通知書の下記日付けをご確認下さい。
◆申告書の『申告年月日』
◆税関通知欄の『許可年月日』
どちらも同じ日付けなので、会社ではこの日付けで売上を計上することになります。書類ですぐに確認できますので、こちらは簡単な計上方法ですね。
③船積日基準
通関の手続きが完了し、輸出許可通知書が出されたら、その後荷物は船積みされます。その「船積みした日」を売上に計上する方法がこちらです。この方法が貿易の経理処理では一般的です。
自分の会社(日本)から商品が出たので、貿易の処理ではこの時点で売上を計上するのが分かりやすいのでしょう。国内の取引で例えるなら、運送会社の送り状を書いて、配達ドライバーへ商品を手渡したイメージと同じですね(*^_^*)
④船荷証券等作成日基準
「船荷(ふなに)証券」とは、貿易における船積書類のひとつで、荷物を運ぶ船会社が輸出者の貨物を受け取ったときに発行される受取証明です。
船荷証券は英語で「Bill of Lading」といわれ、略してB/L(ビーエル)と呼ばれています。貸借対照表のB/S(ビーエス)ではありませんのでご注意を(笑)
「船荷証券(B/L)」は、輸出者にとって、船会社に商品を渡したことを証明する『貨物受取証』という大事な書類になります。こちらの書類の作成日で計上する方法を「船荷証券等作成日基準」と言います。
⑤揚地条件受渡日基準
こちらは、貿易する相手国の港に着いて、商品を揚地へ陸揚げした時をもって売上を計上する方法です。
この方法はいつ着いたのか把握するのも難しいため実務上ではあまり使われません。理由は、貿易条件ではFOB、CIF、CFRなど所有権は輸出者の船積日で移転するからです。
ただ商品や契約内容によっては、所有権がまだ移らない場合には揚地条件受渡日基準で検討すべきでしょう。この基準が一番期間が長いため、税金のことだけを考えれば、『先に売上計上を伸ばせる』ため、一番有利となります(*^^*)
3.まとめ
どの基準で計上するのが良いかはその会社の商品の内容、書類の整備状況、などで個々に判断する必要があります。一番分かりやすい日で、経理処理も単純で手間がかからない日にしましょう!
また、これは『輸出売上』なので、税務調査の時には必ず確認されます。ここのルールを曖昧にしておくと、後で痛い目に合いますのでご注意下さい!
税務調査の注意点はこちらの記事をご参考に下さい。
貿易をしている会社は、輸出売上の計上時期の間違いが税務調査で狙われる! | 福岡の税理士|国際税務・海外進出をサポートする税理士事務所
<注意>
こちらの記事は、中小企業の経営者や経理担当者に分かりやすく書いています。そのため細かな詳細は省いておりますので、ご不明なことは顧問税理士さんか税務署、または当事務所までご相談ください(*^^*)