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輸入業者は「輸入消費税の控除」を忘れていることが多く、消費税の過大な納税に気づいていない

この記事の要点3行でわかる結論

  • 商品を輸入するときに税関へ納める「輸入消費税」は、消費税の申告で売上の消費税から差し引けます。国内の仕入で支払った消費税と同じ扱いです。
  • 通関業者の請求書に立替金として埋もれるため、仕入や租税公課に混ぜて計上し、控除を忘れている会社が少なくありません。漏れた分はそのまま納めすぎになります。
  • 控除の要件はインボイスではなく「輸入許可通知書」と帳簿です。申告書の付表2-3 ⑮欄に金額が入っているかで確認できます。過去の分は更正の請求で取り戻せます。

海外から商品を輸入して国内で販売している会社には、消費税の申告で見落とされやすい項目があります。輸入のときに関税と一緒に税関へ納めている「輸入消費税」です。この税金は、消費税の申告で売上の消費税から差し引くことができます。ところが、実務ではこの控除が漏れたまま申告されている例が珍しくありません。

この記事では、輸入消費税がなぜかかるのか、どのように控除するのか、そして控除漏れをどこで見つけるのかを順に説明します。2023年10月に始まったインボイス制度のもとでも、輸入消費税の控除に適格請求書は必要ありません。その点も含めて、現在の要件で整理します。

1. 輸入消費税とは何か。なぜかかるのか

外国から商品を輸入して保税地域から引き取るときには、原則として消費税がかかります。輸入者は、引取りまでに税関へ輸入申告書を出し、関税と一緒に消費税と地方消費税を納めます。これが輸入消費税です。

消費税は「国内で消費されるもの」に課税する税金です。海外で作られた商品でも、日本に持ち込んで国内で使う、あるいは国内で販売する以上、国内で仕入れた商品と同じように消費税がかかります。もし輸入品だけ消費税がかからなければ、国内で仕入れるより輸入したほうが有利になり、公平ではなくなるからです。

輸入消費税の課税標準(税率を掛ける元の金額)は、商品代金そのものではありません。運賃と保険料を含んだCIF価格に、関税と消費税以外の個別消費税を加えた金額です。そこに10%を掛けたものが輸入消費税になります。なお、免税事業者や個人であっても、輸入品を引き取るときには納税義務者になります。

国税庁No.6563 輸入取引

税関1111 関税、消費税等の税額計算方法(カスタムスアンサー)

2. 輸入消費税は申告で控除できる

消費税の申告では、売上で預かった消費税から、仕入や経費で支払った消費税を差し引いて納税額を計算します。この「支払った消費税」には、国内の取引先に支払った消費税だけでなく、保税地域から引き取った課税貨物にかかった消費税、つまり輸入消費税も含まれます(消費税法30条)。

ここで、輸入消費税10%の内訳を確認しておきます。10%は消費税(国税)7.8%と地方消費税2.2%の合計で、地方消費税は国税の22/78として計算されます。CIF価格と関税の合計が1,000万円の輸入であれば、次のようになります。

輸入消費税10%の内訳(CIF価格+関税=1,000万円の場合)消費税(国税) 1,000万円 × 7.8%78万円地方消費税 78万円 × 22/7822万円合計(実質10%)100万円
税関に納める100万円は、国税7.8%と地方消費税2.2%の2本立てです。申告書には国税分の78万円を記入します

国税庁No.6303 消費税及び地方消費税の税率

この100万円は、国内の仕入先に支払った消費税と同じように、申告で差し引けます。国内売上が税抜3,000万円、国内の経費で支払った消費税が50万円の会社を例に、控除した場合と忘れた場合を比べます。

輸入消費税の控除を忘れると、そのまま納めすぎになる国内売上で預かった消費税(税抜3,000万円 × 10%)300万円国内の仕入・経費で支払った消費税50万円輸入時に税関へ納めた輸入消費税100万円正しい納税額 = 300万円 − 50万円 − 100万円150万円控除を忘れた場合 = 300万円 − 50万円250万円(100万円の納めすぎ)
輸入消費税は国内で支払った消費税と同じように差し引けます。漏れた分は全額、余計に納めることになります

控除を忘れると、輸入消費税100万円をそのまま余計に納めることになります。輸入消費税を仕入や租税公課として費用に計上していれば法人税は少し減りますが、消費税で失う金額のほうがはるかに大きく、会社のお金は確実に減ります。

なお、課税売上割合が95%未満の会社や課税売上高が5億円を超える会社では、輸入消費税も他の課税仕入れと同じように、個別対応方式または一括比例配分方式による按分の対象になります。

3. なぜ控除漏れが起きるのか

輸入消費税の控除漏れは、知識の問題というより、書類の形に原因があります。

  • 通関業者の請求書に埋もれる。輸入消費税は税関へ直接納めるのではなく、通関業者が立て替え、後日「立替金」として請求されるのが一般的です。請求書には関税、消費税、地方消費税、通関料、国内配送料が並びます。この明細を見ずに合計額を「仕入」や「支払手数料」で一括計上すると、輸入消費税が帳簿のどこにも現れません。
  • 費用科目に混ぜてしまう。輸入消費税を「租税公課」や「仕入」に含めて処理すると、法人税の計算上は費用になりますが、消費税の申告では控除の集計から外れます。
  • 輸入の回数が少ない。年に数回しか輸入しない会社や、初めて輸入した会社では、経理担当者も顧問税理士も輸入の書類に慣れていないことが多く、見落としが起きやすくなります。

やました君

輸入消費税の控除漏れは、輸入を始めて数年経ってから「ずっと納めすぎていた」という形で見つかることがほとんどです。通関業者の請求書が届いたら、まず「消費税」「地方消費税」の行を探す習慣をつけてください。それだけで防げます。

4. 控除の要件はインボイスではなく「輸入許可通知書」

2023年10月にインボイス制度が始まり、国内の仕入で消費税を控除するには適格請求書(インボイス)の保存が必要になりました。しかし、輸入消費税は事情が違います。海外の売主に適格請求書を求めることはできませんし、その必要もありません。輸入消費税の控除要件は、次の2つです。

  1. 帳簿に、課税貨物を保税地域から引き取った年月日、課税貨物の内容、引取りにかかる消費税額と地方消費税額(またはその合計額)を記載して保存すること。
  2. 輸入許可通知書(税関長が輸入の許可があったことを証する書類)を保存すること。通関業者が手続きをした場合は、通関業者から受け取ります。電子データで交付されたものはそのデータで構いません。

国税庁No.6497 仕入税額控除のために保存する帳簿及び請求書等の記載事項

控除できるのは、輸入申告を行った者、つまり輸入許可通知書に輸入者として記載されている事業者です。通関業者が輸入消費税を立て替えていても、控除するのは通関業者ではなく、輸入者である自社です。逆に、輸入者名義が自社になっていない貨物の消費税は、自社では控除できません。

国税庁質疑応答事例 輸入取引に係る輸入手続を委託した場合の仕入税額控除の取扱いについて

輸入消費税を控除するまでの4ステップ輸入申告・納税通関時(通関業者が立替)輸入許可通知書を保存通関業者から受け取る帳簿に区分して記帳引取日・内容・税額付表2-3 ⑮欄に記入課税貨物に係る消費税額
インボイス(適格請求書)は不要です。輸入許可通知書と帳簿がそろっていれば控除できます

5. 控除漏れは、申告書のどこで確認できるのか

自社の申告で輸入消費税が控除されているかどうかは、消費税の申告書に添付する「付表2-3 課税売上割合・控除対象仕入税額等の計算表〔一般用〕」で確認できます。この付表の⑮欄「課税貨物に係る消費税額」に金額が入っていれば、輸入消費税が控除の計算に含まれています。

ここに記入するのは、輸入消費税のうち国税分(7.8%相当)です。先ほどの例なら78万円を記入します。地方消費税の22万円は、申告書の中で国税分から自動的に計算されるため、別途記入する必要はありません。⑮欄の金額は、国内の課税仕入れにかかる消費税額などと合算され、⑰欄「課税仕入れ等の税額の合計額」として控除されます。

国税庁付表2-3 課税売上割合・控除対象仕入税額等の計算表〔一般用〕(PDF)

輸入を継続的に行っているのに、この欄が空欄のまま申告されていれば、控除漏れの可能性が高いといえます。過去の申告書の控えを取り出して、この欄を一度確認してみてください。

6. 会計ソフトでは、どの税区分で入力するのか

申告書に正しく反映させるには、帳簿の段階で輸入消費税を専用の税区分で入力しておく必要があります。多くの会計ソフトには、輸入消費税(国税分)と地方消費税(貨物割)のための税区分が用意されています。名称はソフトによって異なりますので、お使いのソフトのマニュアルや税区分一覧で確認してください。

ここでは、CIF価格と仕入代金が同じ1,000万円、関税はないものとして、税抜経理と税込経理それぞれの仕訳例を示します。輸入消費税は通関業者が立て替え、後日精算する前提です。

税抜経理の場合

借方金額貸方金額税区分の考え方
仕入1,000万円買掛金(海外の売主)1,000万円海外の売主への代金は課税仕入れに当たらないため「対象外(不課税)」
仮払消費税78万円未払金(通関業者)78万円輸入消費税(国税7.8%)用の税区分
仮払消費税22万円未払金(通関業者)22万円地方消費税(貨物割2.2%)用の税区分

税込経理の場合

借方金額貸方金額税区分の考え方
仕入1,000万円買掛金(海外の売主)1,000万円「対象外(不課税)」
仕入(または租税公課)78万円未払金(通関業者)78万円輸入消費税(国税7.8%)用の税区分
仕入(または租税公課)22万円未払金(通関業者)22万円地方消費税(貨物割2.2%)用の税区分

ポイントは、商品代金の1,000万円を「課税仕入れ10%」にしないこと、そして輸入消費税の78万円と22万円を専用の税区分で入力することの2つです。商品代金を課税仕入れ10%として入力すると、実際には支払っていない消費税を控除したことになり、逆に過少申告になります。


やました君

輸入消費税の税区分は、会計ソフトの初期設定では表示されていないことがあります。輸入を始めるときに、税区分の設定を一度見直しておくと、その後の入力で迷いません。設定の考え方は次の記事にまとめています。

7. 過去の申告分は「更正の請求」で取り戻す

過去の申告で輸入消費税の控除が漏れていたことに気づいた場合は、「更正の請求」という手続きで納めすぎた消費税の還付を受けることができます。請求できる期間は、原則として申告期限から5年以内です。手続きの流れは次の記事で説明しています。

なお、輸入消費税を費用として計上していた場合、消費税の還付を受けると法人税の所得計算にも影響します。どの事業年度でどのように処理するかは、金額や経理方式によって扱いが分かれますので、更正の請求とあわせて顧問税理士に確認してください。

輸出売上がある会社では、輸入消費税の控除漏れと輸出免税の還付漏れが同時に起きていることもあります。輸出還付の仕組みは次の記事をご覧ください。

8. まとめ

  • 輸入時に税関へ納める輸入消費税(CIF価格+関税等の10%)は、消費税の申告で売上の消費税から差し引ける。
  • 通関業者の請求書の中に立替金として含まれているため、明細を確認せずに一括計上すると控除が漏れる。
  • 控除の要件は、帳簿への記載と輸入許可通知書の保存。インボイス(適格請求書)は不要。控除できるのは輸入者名義の事業者。
  • 申告書の付表2-3 ⑮欄「課税貨物に係る消費税額」に国税分(7.8%相当)が入っているかで確認できる。
  • 会計ソフトでは、商品代金は「対象外」、輸入消費税は専用の税区分で入力する。
  • 過去の漏れは5年以内なら更正の請求で取り戻せる。法人税側の影響もあわせて確認する。

輸入消費税の控除漏れがないか確認したい、過去の分を取り戻したい場合

当事務所では、輸出入取引の消費税に特化した「消費税還付コンサルティング」を行っています。過去の申告書の点検と更正の請求にも対応しています。消費税還付のご相談はこちら

よくある質問

輸入時に税関へ納めた消費税は、申告で控除できますか?

はい。保税地域から引き取った課税貨物にかかる消費税は、国内の取引先に支払った消費税と同じように仕入税額控除の対象です(消費税法30条)。控除できるのは、輸入許可通知書に輸入者として記載されている事業者です。通関業者が立て替えていても、控除するのは輸入者である自社です。

輸入消費税はいくらかかりますか?

課税標準は、運賃と保険料を含んだCIF価格に、関税と消費税以外の個別消費税を加えた金額です。そこに10%を掛けたものが輸入消費税になります。10%の内訳は消費税(国税)7.8%と地方消費税2.2%で、地方消費税は国税の22/78として計算されます。

輸入消費税の控除にインボイスは必要ですか?

いいえ。控除の要件は、帳簿への記載と輸入許可通知書の保存の2つです。帳簿には引取りの年月日、課税貨物の内容、消費税額と地方消費税額を記載します。海外の売主に適格請求書を求める必要はありません。

輸入消費税が控除されているかは、どこで確認できますか?

消費税の申告書に添付する「付表2-3」の⑮欄「課税貨物に係る消費税額」で確認できます。ここに記入するのは国税分(7.8%相当)です。輸入を継続的に行っているのにこの欄が空欄であれば、控除漏れの可能性が高いといえます。

会計ソフトでは、輸入した商品代金をどの税区分にしますか?

海外の売主へ支払う商品代金は「対象外(不課税)」です。これを課税仕入れ10%として入力すると、実際には支払っていない消費税を控除することになり、過少申告になります。輸入消費税は、国税7.8%分と地方消費税2.2%分をそれぞれ専用の税区分で入力してください。

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<注記>この記事は、中小企業の経営者や経理担当者の方に向けて、制度の全体像を分かりやすく説明することを目的としています。細部の要件は省略している箇所があります。個別の判断については、顧問税理士または当事務所にご相談ください。記載内容は2026年9月時点の法令等に基づいています。