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海外仕入れ・海外販売の為替レートの決め方|経理処理の正しい日付とは?

この記事の要点3行でわかる結論

  • 外貨建取引を日本円に換算するときは、原則として取引日の電信売買相場の仲値(TTM)を使います。継続して使うことを条件に、売上や資産はTTB、仕入や費用はTTSを使うこともできます。
  • ここでいう「取引日」は、入金日でも支払日でもありません。売上や仕入を計上すべき日です。輸出入では船積日や引取日を基準にすることが多く、いったん決めたら毎期続けます。
  • 実務では、前月末の相場や前月の平均相場を使う簡便な方法が認められています。ただし継続適用が条件で、月ごとに都合よく変えることはできません。

海外からドルやユーロで仕入れたり、海外へ外貨で販売したりすると、経理でまず迷うのが「いつの為替レートで日本円に直すのか」という点です。日本の会社の帳簿は日本円で記録することになっているため、外貨の取引はその都度、円に換算しなければなりません。

換算のルール自体は難しくありません。原則が一つ、実務用の簡便法が一つ、そして「決めたら続ける」という約束事があるだけです。この記事では、使うレートの種類、換算の基準になる日付、休日の扱い、そして社内ルールの作り方までを順に説明します。

1. 原則は「取引日のTTM(仲値)」

外貨建取引の円換算は、原則としてその取引を計上すべき日の電信売買相場の仲値(TTM)によります。法人税基本通達13の2-1-2に定められた原則です。個人事業主の場合も、所得税基本通達57の3-2に同じ内容が定められています。

国税庁法人税基本通達 第13章の2 第1節 外貨建取引に係る会計処理等

国税庁所得税基本通達 法第57条の3《外貨建取引の換算》関係

銀行が公表している為替相場には3つあり、それぞれ次の意味があります。

名称読み方・意味使う場面
TTS(電信売相場)銀行が顧客に外貨を売るときの相場。TTMより高い仕入その他の費用、負債(継続適用が条件)
TTM(電信売買相場の仲値)TTSとTTBの中間。(TTS+TTB)÷2原則。すべての外貨建取引
TTB(電信買相場)銀行が顧客から外貨を買うときの相場。TTMより低い売上その他の収益、資産(継続適用が条件)

たとえばTTSが147.68円、TTBが145.68円であれば、TTMは(147.68+145.68)÷2で146.68円です。1万ドルの仕入なら、10,000ドル×146.68円=1,466,800円が帳簿に載る金額になります。

どの銀行の相場を使うかも決まっています。原則はその会社の主たる取引金融機関のものです。ただし、同じ方法で入手した合理的な相場を継続して使っている場合はそれも認められます(同通達の注1)。取引銀行のウェブサイトで毎営業日公表されている外国為替公示相場を使うのが、いちばん確実です。

2. TTBやTTSを使ってもよい。ただし継続適用が条件

原則はTTMですが、継続して適用することを条件に、次の使い分けも認められています。

  • 売上その他の収益、資産 取引日のTTB(低いほうの相場)
  • 仕入その他の費用、負債 取引日のTTS(高いほうの相場)

売上は低め、仕入は高めに換算されるため、利益はTTMを使うより小さく出ます。ただし換算の差は決済したときに為替差損益として調整されるので、長い目で見た損得はありません。手間も増えないため、どちらを選んでもかまいません。大切なのは、選んだ方法を毎期続けることです。


やました君

「今期は円安だから仕入はTTM、来期は円高だからTTS」という選び方はできません。継続適用が条件になっているのは、有利なほうを選び直すことを防ぐためです。決めた方法は経理規程やマニュアルに書き残し、担当者が代わっても同じ処理が続くようにしておいてください。

3. 「取引日」とはいつか

換算で迷いやすいのは、レートの種類より日付のほうです。通達がいう取引日とは「その取引を計上すべき日」であって、入金日や支払日ではありません。

棚卸資産の売買であれば、収益を計上するのは引渡しがあった日です。引渡しの日がいつかについては、出荷した日、船積みをした日、相手方に着荷した日、相手方が検収した日などのうち、その商品の性質や契約内容に照らして合理的と認められる日で、会社が継続して収益計上を行っている日によることとされています(法人税基本通達2-1-2)。輸出入では船積日を基準にする会社が多いのは、船荷証券やインボイスで日付を客観的に押さえられるからです。

国税庁法人税基本通達 第1款の2 棚卸資産の販売に係る収益

海外から仕入れたとき — 円に換算するのは「仕入を計上する日」この間の値動きが為替差損益になる注文・契約換算はしない船積み・引取り仕入を計上する日のTTM代金を送金決済。差額は為替差損益
注文した日でも、代金を送金した日でもありません。仕入を計上すべき日の相場で換算します
海外へ販売したとき — 円に換算するのは「売上を計上する日」この間の値動きが為替差損益になる受注・契約換算はしない船積み・引渡し売上を計上する日のTTM代金が入金決済。差額は為替差損益
入金された日の相場で売上を立てるのは誤りです。売上の計上日は自社の基準を継続して使います

輸入仕入をどの日で計上するかは、船積日基準・通関日基準・入荷日基準などいくつかの考え方があります。詳しくは次の記事にまとめています。

4. 取引日に為替相場がないときはどうするか

取引日が土日や祝日にあたると、その日の為替相場はありません。この場合は同日前の最も近い日の為替相場を使います(法人税基本通達13の2-1-2の注3)。翌営業日ではなく、さかのぼるという点が大切です。翌日の相場を待っていては、その日のうちに仕訳が切れないためです。

たとえば11月23日(月曜・祝日)が取引日だとすると、次のようにさかのぼります。

日付為替相場判定
11月23日(月・祝)なし取引日。相場がないのでさかのぼる
11月22日(日)なしさらにさかのぼる
11月21日(土)なしさらにさかのぼる
11月20日(金)ありこの日の相場を使う

同じ日に相場が2つ以上ある場合は、その日の最終の相場(取引日であれば取引発生時の相場)によります。ただし取引日については、最終の相場を使っていればそれも認められます。この考え方は決算日の換算にも同じように使われます。

5. 毎日レートを調べなくてよい方法はあるか

取引のたびに当日の相場を調べていては、輸出入の件数が多い会社では手が回りません。そのため通達では、継続適用を条件に、次のような相場も使えることが認められています(同通達の注2)。

  1. 取引日の属する月(週)の、前月(前週)の末日、または当月(当週)の初日のTTM・TTB・TTS
  2. 前月または前週の平均相場のように、1か月以内の一定期間におけるTTM・TTB・TTSの平均値

①を選んだ場合、11月の取引はすべて10月31日の相場で換算します。②を選んだ場合は、10月の平均相場を11月中ずっと使います。どちらでも、その月のあいだレートが固定されるため、日々相場を確認する必要がなくなります。

実務では②の平均相場がよく使われます。月末の1日だけの相場は、その日にたまたま大きく動いていると損益がぶれるためです。平均であればその影響が小さくなります。

注意点は「1か月以内の一定期間」という枠です。四半期平均や年間平均は、この簡便法の範囲を超えます。また、多通貨会計を採用して各月末に一括して換算している会社は、その一定期間の平均値を使うことも認められています(同通達13の2-1-3)。

6. 決済したときの差額は「為替差損益」

仕入や売上を計上したときのレートと、実際に代金を決済したときのレートは違います。その差額は為替差損益として、決済した日の損益に計上します。すでに計上した仕入や売上の金額をさかのぼって直すことはしません。

仕入の金額は動かさない。差額だけを為替差損益にする仕入を計上した日のTTM 146.68円 × 10,000ドル1,466,800円代金を送金した日のTTM 152.00円 × 10,000ドル1,520,000円差額 = 1,520,000円 − 1,466,800円53,200円 → 為替差損
円安が進んだ分、送金額がふくらみます。仕入は1,466,800円のまま、差額の53,200円を為替差損として計上します

仕訳にすると次のとおりです。10,000ドルを輸入仕入し、後日ドルで送金した場合の例です(税抜経理)。

仕入を計上した日(TTM 146.68円)

借方金額貸方金額摘要
仕入1,466,800円買掛金1,466,800円10,000ドル × 146.68円。海外の売主への支払いは消費税の対象外

代金を送金した日(TTM 152.00円)

借方金額貸方金額摘要
買掛金1,466,800円普通預金1,520,000円計上時の帳簿価額をそのまま落とす
為替差損53,200円円安で送金額がふくらんだ差額。消費税は対象外

売上側も考え方は同じです。船積日のレートで売掛金を立て、入金日のレートとの差額を為替差損益にします。なお、外貨を円に交換したことで生じた為替差損益は、消費税では課税の対象外(不課税)として扱われます。

国税庁質疑応答事例 外貨建取引の課税標準

決算日をまたいで残っている外貨預金や売掛金・買掛金は、決算でもう一度、期末のレートで換算し直す必要があります。その手続きは次の記事で説明しています。

7. 前受金・前渡金があるときは換算し直さない

代金を先に受け取っている(前受金)、あるいは先に払っている(前渡金)場合は、扱いが変わります。その取引に関して受け入れた前受金や支払った前渡金がある部分については、前受金・前渡金の帳簿価額をそのまま収益または費用の額とし、売上や仕入を計上する日のレートで換算し直さないことができます(法人税基本通達13の2-1-5、所得税基本通達57の3-5)。

入金や送金の時点で円貨の金額がすでに確定しているのだから、あとで別のレートに置き換える必要はない、という考え方です。前受金・前渡金は決算の期末換算の対象にもなりません。

8. 消費税でも同じレートを使う

消費税の課税標準や課税仕入れの支払対価の額も、法人税・所得税で円換算した金額をそのまま使います。原則は資産の譲渡等を行った日のTTM、継続適用を条件に売上側はTTB・仕入側はTTSという点まで同じです。決済時との差額を消費税で調整する必要はありません。

国税庁No.6325 外貨建取引の取扱い

ひとつだけ、インボイス制度で注意すべき点があります。外貨建てで請求書を出す場合、品名や金額を外国語・外貨で書くことは差し支えありませんが、「税率の異なるごとに区分した消費税額等」だけは円換算した金額を記載する必要があります。国税庁のQ&A問68では、税抜対価を円換算してから税率を掛ける方法など、4つの計算パターンが示されています。海外の取引先あての請求書でも、それが国内取引であれば適格請求書の要件を満たす必要があるため、請求書の様式を一度確認してください。

国税庁適格請求書等保存方式に関するQ&A 問68 外貨建取引における適格請求書の記載事項(PDF)

輸入した貨物にかかる消費税は、また別のルールで控除します。控除漏れが起きやすい項目なので、あわせて確認してください。

9. 社内ルールを決めて、書き残す

ここまでの内容は、結局のところ次の3つを社内で決めることに集約されます。決めたら文書にして、経理担当者が代わっても同じ処理が続くようにしてください。

  1. どの相場を使うか 取引銀行のTTM、前月末のTTM、前月平均のTTM など
  2. どの日を取引日とするか 輸出は船積日、輸入は通関日 など
  3. どこで相場を確認し、どこに記録するか 毎月初に取引銀行のサイトで確認し、共有の表計算ファイルに転記する など

ここ数年は為替の変動が大きく、同じドル建ての取引でも円換算額が数か月で1割以上動くことが珍しくありません。金額の重みが増しているぶん、「有利なほうを選び直したのではないか」という見方をされないよう、継続適用の記録を残しておく意味も大きくなっています。

外貨の取引を表計算ファイルにまとめ、外貨金額を入力すれば自動で円換算されるようにしておくと、入力ミスも減り、会計ソフトへの取り込みも楽になります。

10. まとめ

  • 原則は取引日のTTM(電信売買相場の仲値)。継続適用を条件に、収益・資産はTTB、費用・負債はTTSも使える。
  • 取引日は入金日や支払日ではなく、売上・仕入を計上すべき日。輸出入では船積日などを基準にし、毎期同じ基準を使う。
  • 取引日に相場がなければ、同日前の最も近い日の相場を使う。翌営業日ではない。
  • 実務では、前月末の相場や1か月以内の一定期間の平均相場を継続して使う簡便法が認められている。
  • 計上時と決済時のレート差は為替差損益にする。仕入や売上の金額はさかのぼって直さない。
  • 前受金・前渡金がある部分は、その帳簿価額をそのまま使い、換算し直さないことができる。
  • 消費税の金額も同じ換算額を使う。ただし適格請求書の消費税額等は円で記載する。

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よくある質問

外貨建取引は、いつの為替レートで円に換算しますか?

原則として、その取引を計上すべき日の電信売買相場の仲値(TTM)で換算します。継続して適用することを条件に、売上その他の収益・資産は取引日のTTB、仕入その他の費用・負債は取引日のTTSを使うこともできます(法人税基本通達13の2-1-2、所得税基本通達57の3-2)。

換算の基準になる「取引日」は、入金日や支払日のことですか?

違います。取引日とは売上や仕入を計上すべき日で、入金日や支払日ではありません。棚卸資産であれば引渡しの日で、出荷した日・船積みをした日・着荷した日・検収した日などのうち、契約内容に照らして合理的と認められる日を継続して使います(法人税基本通達2-1-2)。

取引日が土日祝で為替相場がないときは、どうしますか?

同日前の最も近い日の為替相場を使います(法人税基本通達13の2-1-2の注3)。翌営業日ではなく、さかのぼる点が大切です。たとえば11月23日(月・祝)が取引日なら、11月20日(金)の相場を使います。

毎日レートを調べずに、月ごとに固定してもよいですか?

認められています。継続適用を条件に、取引日の属する月・週の前月末日、前週末日、当月初日、当週初日の相場や、前月・前週の平均相場のように1か月以内の一定期間の平均値を使えます。ただし1か月を超える四半期平均や年間平均は、この簡便法の範囲を超えます。

決済したときのレートの差はどう処理しますか?

差額を、決済した日の為替差損益として計上します。すでに計上した仕入や売上の金額をさかのぼって直すことはしません。1万ドルの仕入をTTM146.68円で計上し、TTM152.00円で送金したのであれば、差額の53,200円が為替差損になります。

<注記>この記事は、中小企業の経営者や経理担当者の方に向けて、制度の全体像を分かりやすく説明することを目的としています。細部の要件は省略している箇所があります。個別の判断については、顧問税理士または当事務所にご相談ください。記載内容は2026年9月時点の法令等に基づいています。