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海外の会社と契約書を交わす場合に、収入印紙は必要なのか?!

この記事の要点3行でわかる結論

  • 印紙税法は日本の国内法です。課税文書の作成が国外で行われる場合は、その文書に基づく権利の行使や保存が日本国内であっても印紙税は課税されません(印紙税法基本通達49条)。
  • 契約書の「作成の時」は、署名押印を始めた時ではなく、当事者の意思の合致を証明した時です。海外の相手方が最後に署名するなら国外での作成となり、2通とも印紙は不要です。反対に日本側が最後に押印すると、相手に返送する分も含めて2通とも課税されます。
  • 電磁的記録は印紙税法上の文書に含まれないため、電子契約に印紙税はかかりません。一方、契約書に国外の作成場所を書いても、現実に国内で作成されていれば印紙税法が適用されます。形式だけ整える対応は通りません。

印紙税は、日本の法律で定められた税金です。そうすると、相手が海外の会社である契約書にも収入印紙が必要なのかどうか、判断に迷います。

結論から書きます。印紙税がかかるのは、日本国内で作成された文書だけです。契約書が国外で作成されたのであれば、日本の会社が当事者であっても、その契約書を日本国内で保存していても、印紙税はかかりません。

問題は「どこで作成されたことになるのか」の判定です。この記事では、国税庁が公表している考え方に沿って、判定の基準と、実務で気をつける点を整理します。

1. 印紙税がかかるのは、日本国内で作成された文書だけ

印紙税は、印紙税法別表第一(課税物件表)に掲げられた20種類の文書に課税されます。課税文書に当たるかどうかは、次の3つをすべて満たすかどうかで判断します(印紙税法2条・5条)。

  • 課税物件表に掲げられている文書により証されるべき事項(課税事項)が記載されていること
  • 当事者の間において課税事項を証明する目的で作成された文書であること
  • 印紙税法5条により非課税とされる文書でないこと

国税庁No.7100 課税文書に該当するかどうかの判断

e-Gov印紙税法

そのうえで、印紙税法は日本の国内法ですから、適用される地域は日本国内に限られます。国税庁の通達は、この点をはっきり書いています。

文書の作成場所が法施行地外である場合の当該文書については、たとえ当該文書に基づく権利の行使又は当該文書の保存が法施行地内で行われるものであっても、法は適用されない。ただし、その文書に法施行地外の作成場所が記載されていても、現実に法施行地内で作成されたものについては、法が適用されるのであるから留意する。(印紙税法基本通達49条)

国税庁印紙税法基本通達 第8節 納税地(49条 作成場所が法施行地外となっている場合)

前段が原則、後段のただし書きが歯止めです。この2つはセットで読んでください。後半については、記事の後ろのほうであらためて取り上げます。

印紙が必要かどうかは、最後に合意が成立した場所で決まる契約書の「作成の時」国外で意思が合致した→ 印紙税法の適用なし(2通とも不要)国内で意思が合致した→ 2通とも課税(相手に返す分も)
印紙税法基本通達49条。印紙税法は日本の国内法なので、適用されるのは日本国内で作成された文書だけです

2. 契約書は、いつ「作成」されたことになるのか

属地主義がわかっても、「どこで作成されたか」を決められなければ判定できません。ここで効いてくるのが、印紙税法上の「作成」の定義です。

法に規定する課税文書の「作成」とは、単なる課税文書の調製行為をいうのでなく、課税文書となるべき用紙等に課税事項を記載し、これを当該文書の目的に従って行使することをいう。(印紙税法基本通達44条第1項)

そして「作成の時」は、文書の目的ごとに決まります。同条第2項は、次のように区分しています。

文書の目的作成の時
相手方に交付する目的で作成される交付の時領収書、手形、株券
契約当事者の意思の合致を証明する目的で作成されるその証明の時双方が署名押印する契約書
一定事項の付け込み証明をする目的で作成される最初の付け込みの時通帳など
認証を受けることにより効力が生ずる認証の時定款など

国税庁印紙税法基本通達 第7節 作成者等(44条 作成等の意義)

双方が署名押印する契約書は2行目に当たります。用紙に印字して自社の代表者が押印しただけでは、まだ「作成」ではありません。相手方の署名がそろって、はじめて作成されたことになります。

3. 2通作成して郵送するとき、どちらが課税されるか

実務でいちばん多いのが、次のやりとりです。国税庁の質疑応答事例「外国で作成される契約書」が、まさにこの形を取り上げています。

ケースA 日本で2通を作成し、アメリカの会社が最後に署名する

日本の会社が契約書を2通作成して代表者が署名押印し、アメリカのA社へ郵送する。A社が署名し、そのうち1通を返送してくる。この形です。

署名押印しただけでは「作成」にならないまだ「作成」されていない日本で2通を作成課税事項を記載し、代表者が署名押印アメリカへ郵送この時点では合意は未成立相手方が署名=作成の時(アメリカ)1通が返送される日本で保存
印紙税法基本通達44条。契約書の作成の時は、当事者の意思の合致を証明する時です

この場合、意思の合致が証明されるのはA社が署名した時であり、その場所はアメリカです。作成場所が法施行地外ですから、この契約書には印紙税法の適用がありません。返送されて日本で保存する1通も、A社が持つ1通も、どちらも印紙は不要です。

国税庁質疑応答事例 外国で作成される契約書

ケースB アメリカの会社が作成・署名し、日本の会社が最後に押印する

順序が逆になると、結論も逆になります。A社が契約書を用意して署名し、日本の会社へ送付する。日本の会社が押印して合意が成立する。この場合は日本国内が作成場所です。

ここで見落とされやすいのが、課税される通数です。国税庁は、この逆パターンについて「貴社が保存するものだけではなく、A社に返送する契約書にも印紙税が課税される」としています。2通とも課税されます

ケースA(相手が最後に署名)ケースB(自社が最後に押印)
意思の合致を証明した場所アメリカ日本
印紙税法の適用なしあり
自社で保存する1通印紙は不要印紙が必要
相手方へ渡す1通印紙は不要印紙が必要

やました君

契約書を1通だけ作って原本を相手方が持ち、こちらは写しを保管する運用もあります。単なる写しであれば課税されませんが、写しに署名押印があったり「原本と相違ない」旨の証明があったりすると、それ自体が課税文書として扱われることがあります。通数を減らす工夫をするときは、この点も一緒に確認してください。

国税庁No.7120 契約書の写し、副本、謄本等

4. 課税される場合、いくら貼るのか

ケースBのように日本で作成することになった場合、税額は文書の種類と記載金額で決まります。海外との取引で出てくることが多いのは、次の3つです。

文書の種類印紙税額(1通につき)
第1号文書不動産・無体財産権・船舶などの譲渡に関する契約書、消費貸借に関する契約書、運送に関する契約書記載金額に応じて200円〜60万円
第2号文書請負に関する契約書(工事請負契約書、注文請書、広告契約書など)記載金額に応じて200円〜60万円
第7号文書継続的取引の基本となる契約書(売買取引基本契約書、代理店契約書など)一律4,000円

国税庁No.7140 印紙税額の一覧表(その1)第1号文書から第4号文書まで

国税庁No.7141 印紙税額の一覧表(その2)第5号文書から第20号文書まで

第7号文書は、特定の相手方との間で継続的に生じる取引の基本となる契約書です。金額の多寡にかかわらず1通4,000円で、記載金額の階段はありません。ただし、契約書に記載された契約期間が3か月以内で、かつ更新の定めがないものは除かれます。

国税庁No.7104 継続的取引の基本となる契約書

請負契約(第2号文書)の階段は次のとおりです。海外の会社に開発や加工を委託する契約は、ここに当たることがあります。

記載された契約金額印紙税額
1万円未満非課税
1万円以上100万円以下200円
100万円超 200万円以下400円
200万円超 300万円以下1,000円
300万円超 500万円以下2,000円
500万円超 1,000万円以下1万円
1,000万円超 5,000万円以下2万円
5,000万円超 1億円以下6万円
1億円超 5億円以下10万円
5億円超 10億円以下20万円
10億円超 50億円以下40万円
50億円超60万円
契約金額の記載のないもの200円

なお、建設工事の請負に関する契約書のうち契約金額が一定額を超えるものは、令和9年3月31日までに作成されるものについて税率が軽減されています。不動産の譲渡に関する契約書も同様です。

国税庁No.7108 不動産の譲渡、建設工事の請負に関する契約書に係る印紙税の軽減措置

5. 契約金額がドル建てのときは、円に換算して階段を判定する

海外との契約書は、契約金額が外貨で書かれていることがほとんどです。この場合の記載金額の考え方も、通達に定めがあります。

印紙税法基本通達24条は、記載金額の計算方法を(1)から(10)まで列挙しており、その(10)が外貨のケースです。記載金額が外国通貨により表示されている場合は、文書作成時の本邦通貨に換算した金額が記載金額になります。同項の注書きにより、米ドルは基準外国為替相場、その他の外国通貨は裁定外国為替相場で換算します。

国税庁印紙税法基本通達 第5節 記載金額(24条 記載金額の計算)

階段の境目に近い契約では、この換算がそのまま税額を変えます。たとえば請負契約の金額が7万ドルであれば、1ドル140円で換算すると980万円で1万円の階段、150円で換算すると1,050万円で2万円の階段です。円安が進んだ局面では、以前と同じドル建て金額でも貼る印紙が増えることになります。

換算に使うレートは、会計処理で使う社内レートとは別の考え方です。日々の記帳で使うレートの決め方は、次の記事にまとめています。

6. 電子契約なら、そもそも印紙税がかからない

ここまでは紙の契約書の話です。電子契約であれば、作成場所を気にする必要がありません。

国税庁の質疑応答事例は、請負契約の成立を証するものとして書面の注文請書を作成する代わりに、取引情報を記録した電磁的記録に電子署名を付して取引先へ電子メールで送信した場合について、次のように回答しています。

印紙税の課税対象となるのは、課税物件表の物件名欄に掲げられている文書であり、電磁的記録は文書に含まれません。したがって、おたずねの電磁的記録に印紙税は課税されません。(関係法令通達 印紙税法第2条)

国税庁質疑応答事例 取引先にメール送信した電磁的記録に関する印紙税の取扱い

海外の会社との契約は、時差と郵送の手間があるため、もともと電子署名サービスで締結することが増えています。印紙税の面でも有利ということになります。

ただし、電子で締結したあとに同じ内容を紙に印刷し、あらためて双方が署名押印し直せば、その紙は当事者の意思の合致を証明する目的で作成された文書になります。控えとして印刷するだけなら問題ありませんが、電子で完結させるのであれば、署名は最後まで電子で通してください。

なお、電子取引で授受したデータの保存方法は、電子帳簿保存法の側で別途決まっています。契約データの保存要件は、印紙税とは切り離して確認してください。

国税庁電子帳簿保存法関係

7. 形式だけ国外にしても通らない

ここまで読むと、契約書の署名の順番を変えるだけで印紙税がなくなるように見えます。実際、順序を決めるのは当事者の自由ですから、結果として印紙が不要になること自体は問題ありません。

問題になるのは、実態が伴わない場合です。印紙税法基本通達49条のただし書きを、もう一度引用します。

ただし、その文書に法施行地外の作成場所が記載されていても、現実に法施行地内で作成されたものについては、法が適用されるのであるから留意する。(印紙税法基本通達49条)

契約書の末尾に「作成地 シンガポール」と書いても、実際には日本の本社で双方が集まって調印していれば、印紙税法が適用されます。書いてある場所ではなく、現実にどこで作成されたかで判断されるということです。

反対に、実態として国外で作成したのであれば、それを示せるようにしておく必要があります。国税庁の質疑応答事例も、この点に触れています。返送された契約書は日本で保存されるため、いつどこで作成されたものかを明らかにしておかなければ、印紙税が納付されていない契約書について後日トラブルが生じることが予想される。したがって、契約書上に作成場所を記載するか、記載がなければその事実を付記しておく等の措置が必要になる、という趣旨です。

具体的には、次のようなものを契約書とセットで残しておくと説明しやすくなります。

  • 契約書上の作成地の記載、または作成場所を付記したメモ
  • 相手方へ発送した記録と、返送されてきた封筒・送り状の控え
  • 署名日と署名者の所在地がわかるメールのやりとり
  • 電子契約であれば、電子署名のタイムスタンプと監査ログ

印紙を貼らなかったことが調査で指摘されると、本来納付すべき印紙税額とその2倍に相当する金額の合計、つまり当初に納付すべき印紙税額の3倍の過怠税が徴収されます。貼った印紙を消印しなかった場合も、その印紙の額面に相当する過怠税が徴収されます。

調査前に自主的に「印紙税不納付事実申出書」を提出した場合は1.1倍に軽減されますが、過怠税は法人税の損金にも所得税の必要経費にも算入されません。

国税庁No.7131 印紙税を納めなかったとき


やました君

印紙税は、金額そのものより「まとめて指摘される」ことのほうが痛い税金です。同じ雛形の契約書を年間何十通も交わしていれば、指摘は1通では終わりません。海外取引の契約書は、雛形を作る段階で締結フローと印紙の要否をセットで決めておくことをおすすめします。

8. まとめ

  • 印紙税法は日本の国内法。課税文書の作成が国外で行われる場合は、権利の行使や保存が国内であっても印紙税は課税されない(印紙税法基本通達49条)。
  • 契約書の「作成の時」は、当事者の意思の合致を証明した時(同44条)。自社が署名押印した時点ではない。
  • 日本で2通作成して海外の相手方が最後に署名するなら、2通とも印紙は不要。
  • 反対に日本側が最後に押印すると、自社保存分だけでなく相手方へ返送する分も課税される。
  • 課税される場合の税額は文書の種類と記載金額で決まる。継続的取引の基本となる契約書(第7号文書)は一律4,000円。
  • 契約金額が外貨建てのときは、文書作成時のレートで円に換算した金額で階段を判定する(同24条(10))。
  • 電磁的記録は印紙税法上の文書に含まれないため、電子契約に印紙税はかからない。
  • 作成地を書くだけでは足りない。現実に国内で作成されていれば印紙税法が適用される。納付漏れの過怠税は原則3倍で、損金にも必要経費にもならない。

海外の会社との取引を始めるとき、契約書のほかにも決めておくことがあります。進出の形態そのものを比べる記事と、売上をいつ計上するかの記事も合わせてご覧ください。

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よくある質問

海外の会社と交わす契約書に、収入印紙は必要ですか?

課税文書の作成が国外で行われたのであれば必要ありません。印紙税法は日本の国内法なので、その文書に基づく権利の行使や保存が国内であっても適用されないからです(印紙税法基本通達49条)。ただし同条のただし書きにあるとおり、文書に法施行地外の作成場所が記載されていても、現実に日本国内で作成されたものには印紙税法が適用されます。

契約書は、いつ「作成」されたことになりますか?

当事者の意思の合致を証明した時です(印紙税法基本通達44条2項)。用紙に印字して自社の代表者が押印しただけでは、まだ作成ではありません。双方が署名押印する契約書では、相手方の署名がそろって、はじめて作成されたことになります。

日本側が最後に押印した場合、印紙は何通分必要ですか?

2通とも必要です。意思の合致を証明した場所が日本ですから、自社が保存する1通だけでなく、相手方へ返送する契約書にも印紙税が課税されると国税庁は示しています。反対に、日本で2通作成して海外の相手方が最後に署名する形なら、2通とも印紙は不要です。

契約金額がドル建てのときは、どう判定しますか?

文書作成時の本邦通貨に換算した金額が記載金額になります(印紙税法基本通達24条(10))。米ドルは基準外国為替相場、その他の外国通貨は裁定外国為替相場で換算します。階段の境目に近い契約では換算がそのまま税額を変え、円安が進んだ局面では同じドル建て金額でも貼る印紙が増えます。

電子契約なら印紙税はかかりませんか?

かかりません。印紙税の課税対象は課税物件表に掲げられた文書であり、電磁的記録は文書に含まれないためです。ただし、電子で締結したあとに同じ内容を紙に印刷して双方があらためて署名押印すれば、その紙が課税文書になります。控えとして印刷するだけなら問題ありませんが、電子で完結させるなら署名は最後まで電子で通してください。

<注記>この記事は、中小企業の経営者や経理担当者の方に向けて、制度の全体像を分かりやすく説明することを目的としています。細部の要件は省略している箇所があります。個別の判断については、顧問税理士または当事務所にご相談ください。記載内容は2026年9月時点の法令等に基づいています。