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税金情報&お知らせ

海外進出の方法にはどんな種類があるのか。メリット・デメリットをまとめてみました。

日本の会社が海外へ進出する際には、いくつかの方法があります。その方法と、それに関するメリット・デメリットを確認しておきましょう!

 

海外進出の種類とメリット・デメリット

 

1.海外進出形態の種類は?

日本の会社が海外に進出する際には、大きくは3つの形態があります。

・駐在員事務所
・海外支店
・現地の外国法人

 

それぞれの概要を確認してみましょう(*^^*)

 

2.駐在員事務所とはなんだろう?

駐在員事務所とは、海外進出する際に海外でテナントを借りたり、または海外へ派遣した人の住居を一部オフィスとして、日本のスタッフを「駐在」させておく事務所のことを言います。

 

イメージとしては、海外へ進出する際の事前リサーチの『仮オフィス』という感じです。そのため、まだ売上なども発生せず、事業の準備をしている段階です。

 

そして、その駐在員事務所に日本から派遣された人は、そこの事務所を拠点として、その国の情報収集や現地パートナーとなる会社や人を探したりします。

 

そのため駐在員事務所では、基本的に売上は発生しない(収益事業は行わない)ことになります。万が一そこで事業を行えば、海外の現地で税金の申告が必要になるからです。この辺りは、次の外国支店や現地の外国法人と合わせて確認しましょう!

 

駐在員事務所で税務を中心にいくつかの注意点をご紹介します。

海外の経費

海外で売上がないため、海外で生じた経費は全て日本の法人で負担し、申告することになります。

 

そのため、日本の会社である程度の投資資金を確保しておくことが必要です。

駐在員事務所を置くということは、その国で将来事業を行い、利益を上げることを前提としていますので、日本の会社で経費になるからといって、無限に使うことはできませんからね(*^^*)

売上を計上するのは海外支店にしてから

基本的に駐在員事務所では「収益活動」ができないため、現地でのリサーチや営業活動で見込みがあれば、海外支店を設ける必要があります。

 

収益が上がるということは、イコール税金の申告が必要となるので、現地国で税理士などのパートナーを探しておくことも必要です。その場合は、ジェトロなどの公的な機関で探せますのでご利用ください。

»»»日本貿易振興機構 ジェトロ 中小企業海外展開現地支援プラットフォーム

 

相手国との租税条約を確認する

この辺りも、かなり細かなことになりますので、財務省のページで確認することをオススメします(*^^*)

»»»財務省 租税条約に関する資料

 

3.海外支店とはなんだろう?

海外支店とは、日本でも同じように、東京支店、大阪支店、名古屋支店、福岡支店というようなイメージと一緒です。それが海外にあるだけです。

 

税務的な表現でこの海外支店のことを、『恒久的施設=PE(Permanent Establishment)』と呼んでいます。このような支店は、駐在員事務所と違って、通常通り商売をすることができます。

 

そのため国際課税では、「恒久的施設無ければ課税なし」という基本ルールがあるように、海外支店があれば海外で税務申告が必要ということにもなります。

 

注意点を以下で説明します。

経費は日本法人で申告する

日本法人で利益が出ているのであれば、海外に先行投資しながら節税(海外の経費を計上)することが可能です。

 

日本でいまの事業が儲かっていても、5年後、10年後を考えると、海外かその他の事業にも投資が必要となります。安易な節税よりも先行投資をして、「将来の収益を稼ぐ投資をして節税」となる方が健全です(*^^*)

 

利益も日本法人で申告する

日本の法人税では「全世界課税が基本」であるため、海外支店で稼いだ利益であっても日本で申告する必要があります。日本でも本店と支店で稼いだ利益は合算して申告するのと同じことです。

 

この場合は、海外であるためドルやユーロで取引しますが、日本法人で申告するので日本円で換算し直す必要があるため、事務的な手間がかかります。

また、法人税も日本の税率となります。

 

海外の現地でも申告が必要

また海外に支店あり、そこで売上があるため、現地国での申告も必要となり税金の課税があります。よって海外支店の利益は「日本と海外のダブルで税金が課税される」のです。これを専門用語では「二重課税」と言います。

 

また海外で税金の申告が必要であるということは、現地の税理士に依頼するコストもかかってくるということです。

 

二重課税となるため、外国税額控除を忘れずに!

このように二重課税となると海外進出するメリットはありませんよね?!

そのようなことを回避するために「外国税額控除」というものが設けられています。

 

外国税額控除とは、同じ利益に二重で税金がかかっているため、海外の利益ですでに課税され払った税金は一定額控除します、という制度です。

 

ただ控除はされますが、一定の控除制限があったりして、全額控除できない場合もありますので、こちらをご確認ください。

»»»外国の収入から税金が差し引かれたら、外国税額控除を使いましょう!

 

撤退の損失は日本法人の経費になる

これは良いかどうか分かりません(笑)

外国法人の場合と比べると、日本法人で利益が出ていれば、その利益を撤退費用の損失と相殺できるので、少なからずメリットはあるでしょう。

 

外国法人が撤退する場合は、基本的に残っている損失は切り捨てられますからね。M&Aなどない限りには。

 

4.外国法人とはなんだろうか?

外国法人とは、海外で新たに会社を設立することを言います。よって、日本法人の子会社、または社長個人が出資して設立する日本法人の兄弟会社みたいなイメージです(*^^*)

 

親子の関係はありますが、日本法人とは別会社であるため会社のお金はキチンと分ける必要があります。また売上や経費も全て各々の会社で申告することになります。

 

注意点は以下のようなものがあります。

メリット

◆別会社であるため、所得の分散ができる(移転価格税制)

◆外国法人も有限責任であるため、リスクを分散できる

◆海外の法人税率が低い場合、グループ全体の実効税率を下げれる

◆外国法人に出資し配当を受け取ると、配当金には税金がかからない(外国子会社配当益金不算入)

 

デメリット

◆先行投資の赤字をいつ回収できるか?

◆赤字で撤退の場合には、日本法人の経費にできない

◆日本企業との取引を気をつける(移転価格税制)

◆外国法人へ貸付とした場合の過小資本税制の問題

◆日本法人が経費を負担する場合の寄付金の問題

◆現地国が日本のタックスヘイブン税制の対象となる問題

◆源泉徴収などの事務手続きの煩雑さ

 

挙げたらキリがありませんね(笑)

別で注意点をまとめて行きたいと思いますのでお待ち下さい(*^^*)

 

5.まとめ

このように、日本企業が海外に進出する場合には、ビジネス以外で税務的な注意点が数多くあります。

 

そのため、まずは駐在員事務所で現地の情報とパートナーを探しながら様子を見て、その後収益が見込めれば海外支店を設け、その支店で独立採算でいけるのであれば海外法人を設立する流れが一般的かと思います。

 

利益を上げるにはある程度のリスクは必要です。日本の市場だけでこのまま縮小するのもある意味リスクでしょう。どちらを取るかはあなた次第です!!

 

<注意>
こちらの記事は、中小企業の経営者や経理担当者に分かりやすく書いています。そのため細かな詳細は省いておりますので、ご不明なことは顧問税理士さんか税務署、または当事務所までご相談ください(*^^*)