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日本の居住者が、海外の金融資産に投資した場合の税金はどうなるのか?

この記事の要点3行でわかる結論

  • 日本の居住者(非永住者以外)は全世界の所得に日本の所得税がかかります。海外の証券会社や銀行で得た利子・配当・売却益も、種類に応じて申告分離課税か総合課税で確定申告が必要です。
  • 外貨建ての収入は、その取引を計上すべき日の電信売買相場の仲値(TTM)で円に直します。外貨を使ったり円に戻したりした時点で生じる為替差益は、雑所得として総合課税です。
  • 上場株式等の譲渡損失の損益通算と3年間の繰越控除は「金融商品取引業者等を通じた譲渡」が要件です。国外の証券会社を使っている場合は、まず口座を開いている業者の登録状況を確認してください。

海外の証券会社に口座を開いて外国株式や債券を持つ方、外貨建ての保険や投資信託を海外で契約している方が増えました。利益が出たときに、日本でどう申告するのかを整理しておかないと、後から修正申告になります。

この記事では、日本の居住者が海外の金融商品に投資した場合の課税関係を、商品の種類ごとに一覧にします。あわせて、円換算のルール、損益通算と繰越の可否、2027年から始まる防衛特別所得税、そして制度が変わる途中にある暗号資産の扱いを説明します。

1. この記事の前提

次の条件を前提に説明します。

  • 日本に住んでいる個人で、非永住者以外の居住者であること
  • 金融商品を国外の証券会社・銀行で保有していること(日本国内で源泉徴収されないもの)

日本の居住者は、所得が生じた場所が国内か国外かを問わず、すべての所得に日本の所得税がかかります。全世界所得課税です。日本国籍がなく、過去10年以内の国内居住期間が5年以下の「非永住者」であれば課税範囲が狭まりますが、この記事はその区分ではない方を対象にしています。

どこまでが日本の課税対象になるか非永住者以外の居住者非永住者非居住者国内で生じた所得課税課税課税国外の所得(国内払い・送金分)課税課税課税されない国外の所得(それ以外)課税課税されない課税されない
この記事は、いちばん上の「非永住者以外の居住者」を前提にしています

国税庁No.2010 納税義務者となる個人

海外の所得に現地の税金がかかっている場合は、外国税額控除で二重課税を調整します。

2. 海外の金融商品ごとの課税関係

商品の種類ごとに、所得の区分と課税方式を並べます。国内の証券会社で買った場合と違い、国外の口座では日本の源泉徴収も年間取引報告書もありません。自分で集計して申告する前提で見てください。

種類利子・配当・分配金譲渡益・償還差益・為替差益主な根拠
外国の上場株式配当所得。総合課税か、上場株式等の配当所得等としての申告分離課税(所得税15%・住民税5%)を選択します。外国法人からの配当は配当控除を受けられません。上場株式等に係る譲渡所得等として申告分離課税(所得税15%・住民税5%)No.1330・No.1331・No.1463・No.1250
特定公社債(外国国債・公募公社債・上場公社債など)利子所得。上場株式等の配当等として申告分離課税(所得税15%・住民税5%)上場株式等に係る譲渡所得等として申告分離課税(所得税15%・住民税5%)。償還差益も同じ扱いですNo.1310・No.1331・No.1463
一般公社債(特定公社債以外)利子所得。国内で支払われる利子は源泉分離課税ですが、日本で源泉徴収されない国外払いのものは確定申告が必要です一般株式等に係る譲渡所得等として申告分離課税(所得税15%・住民税5%)No.1310・No.1463
海外の銀行預金・外貨預金利子所得。日本で源泉徴収されない国外払いの利子は確定申告が必要です外貨を円に戻したときなどに生じる為替差益は、雑所得として総合課税No.1310・所得税法57条の3
投資信託公募・上場されているものは上場株式等の配当等として、総合課税か申告分離課税を選択。私募のものは一般株式等の扱いになります公募・上場のものは上場株式等に係る譲渡所得等として申告分離課税。償還・解約も同じ扱いですNo.1331・No.1463
金地金・プラチナ総合課税の譲渡所得。所有5年以内は短期、5年超は長期(金額を2分の1に)。他の総合課税の譲渡益と合わせて50万円の特別控除がありますNo.3161・No.3105
暗号資産原則として雑所得(総合課税)。令和8年度税制改正で申告分離課税の導入が予定されています(本文3参照)No.1524・暗号資産FAQ
FX(外国為替証拠金取引)金融商品取引業者等との店頭デリバティブ取引は、先物取引に係る雑所得等として申告分離課税(所得税15%・住民税5%)。それ以外の相手との取引は総合課税の雑所得になりますNo.1521・No.1522
ワインなどの動産総合課税の譲渡所得。所有5年以内は短期、5年超は長期(金額を2分の1に)。50万円の特別控除がありますNo.3105

国税庁No.1330 配当金を受け取ったとき(配当所得)

国税庁No.1331 上場株式等の配当等に係る申告分離課税制度

国税庁No.1310 利息を受け取ったとき(利子所得)

国税庁No.1463 株式等を譲渡したときの課税(申告分離課税)

国税庁No.1250 配当所得があるとき(配当控除)

国税庁No.3161 金地金の譲渡による所得

国税庁No.3105 譲渡所得の対象となる資産と課税方法

国税庁No.1521 外国為替証拠金取引(FX)の課税関係

表を見るときの注意点を3つ挙げます。

  • 外国法人からの配当に配当控除はありません。総合課税を選んでも、日本国内に本店のある法人からの配当のような税額控除は受けられません。
  • 「上場株式等」に当たるかどうかは商品ごとに確認が必要です。とくに海外籍の投資信託や仕組債は、公募かどうか、上場しているかどうかで一般株式等の扱いになることがあります。目論見書と取引報告書で確認してください。
  • FXは相手方で結論が変わります。申告分離課税の対象になるのは、金融商品取引業者または登録金融機関との店頭デリバティブ取引です。それ以外の相手との取引は総合課税の雑所得になります。海外のFX業者を使っている場合は、その業者が日本の登録を受けているかを確認してください。

やました君

国外の口座には特定口座がないため、取得価額の管理はご自身の記録が頼りになります。買付ごとの約定日・数量・単価・その日のレートを表にして残しておくと、売却した年の計算が一気に楽になります。何年も経ってから取得費が分からなくなるのが、いちばん多い困りごとです。

3. 暗号資産は制度が変わる途中にある

暗号資産は、現在のところ売却や使用による利益が原則として雑所得(総合課税)です。取扱いの詳細は国税庁の「暗号資産に関する税務上の取扱いについて(情報)」にまとまっています。記事によっては「仮想通貨」と書かれていますが、現在の法令上の名称は「暗号資産」です。

国税庁No.1524 暗号資産を使用することにより利益が生じた場合の課税関係

国税庁暗号資産に関する税務上の取扱いについて(情報)

ここに大きな改正が予定されています。令和8年度税制改正の大綱では、金融商品取引法等の改正を前提として、居住者等が暗号資産取引業を行う者に対して「特定暗号資産」の譲渡等をした場合、その譲渡所得等を他の所得と分離して20%(所得税15%・個人住民税5%)で課税するとされています。損失の3年間の繰越控除も設けられます。

適用開始は、金融商品取引法の改正法の施行の日の属する年の翌年1月1日以後です。2026年9月時点でその施行日は決まっていません。また、対象となる「特定暗号資産」は金融商品取引業者登録簿に登録されているものに限られ、取引の相手も暗号資産取引業を行う者とされています。海外の取引所を使った取引がこの申告分離課税の対象になるかどうかは、法令と通達が固まるまで判断できません。当面は雑所得として集計し、改正の内容が確定してから切り替えを検討してください。

財務省令和8年度税制改正の大綱(個人所得課税)

4. 外貨はいつのレートで円に直すのか

海外の口座で受け取る利子や配当、売却代金はすべて外貨です。日本の申告は円で行うため、円換算が必要になります。

居住者が外貨建取引を行った場合、その金額は取引時の外国為替の売買相場で換算します(所得税法57条の3)。実務上は、その取引を計上すべき日の電信売買相場の仲値(TTM)を使うのが原則です。使う相場は原則としてご自身の主たる取引金融機関のもので、合理的なものを継続して使っていれば認められます。

国税庁所得税基本通達 法第57条の3《外貨建取引の換算》関係

もうひとつ押さえておきたいのが、為替差損益が「いつ」発生するかです。外貨のまま口座に置いている間は、円に対して値上がりしていても、まだ評価差額にすぎません。その外貨を使って別の資産を買ったり、円に戻したりした時点で所得として実現します。

国税庁の質疑応答事例では、米ドル建預金を払い出して海外の建物を購入したケースについて、建物の購入価額の円換算額と、その購入に充てた外国通貨を取得したときのレートで換算した金額との差額を、所得として認識する必要があるとされています。複数回に分けて外貨を取得している場合は、平均レートを求めて計算します。

国税庁質疑応答事例 預け入れていた外貨建預貯金を払い出して貸付用の建物を購入した場合の為替差損益の取扱い

5. 損失は他の所得と通算できるか

損益通算とは、黒字の所得と赤字の所得を相殺することです。海外の金融資産では、次のように整理できます。

組み合わせ通算できるか
上場株式等の譲渡損失 ⇔ 申告分離課税を選んだ上場株式等の配当所得等できる(後述の要件あり)
上場株式等の譲渡損失 ⇔ 一般株式等の譲渡所得できない
雑所得どうし(為替差損、暗号資産、総合課税のFX)雑所得の中では相殺できる。他の所得とは通算できない
総合課税の譲渡所得(金地金・プラチナ・ワインなど)の損失 ⇔ 他の所得生活に通常必要でない資産の損失は通算できない

ここで重要なのが、上場株式等の譲渡損失の損益通算と繰越控除の適用要件です。国税庁のタックスアンサーでは「上場株式等を金融商品取引業者等を通じて譲渡したこと等により生じた譲渡損失」が対象とされ、相対取引などによる譲渡損失は対象外と明記されています。

国税庁No.1474 上場株式等に係る譲渡損失の損益通算及び繰越控除

つまり、国外の証券会社が日本の金融商品取引業者等に当たらない場合、その口座で出た譲渡損失は損益通算も3年間の繰越控除も使えない可能性があります。海外口座で大きな損失が出た年は、この点を確認してから申告方針を決めてください。なお、繰越控除は、譲渡がなかった年も含めて毎年連続して確定申告書を提出することが要件です。

6. 復興特別所得税と、2027年から加わる防衛特別所得税

所得税には、復興特別所得税が上乗せされています。課税期間は平成25年から令和29年(2047年)までで、基準所得税額の2.1%です。以前は令和19年(2037年)までとされていましたが、令和8年度税制改正で10年延長されました。古い記事や資料には旧年数が残っているので注意してください。

復興特別所得税は2047年まで。2027年から防衛特別所得税が加わる復興特別所得税 開始平成25年(2013年)防衛特別所得税 創設令和9年(2027年)1月1日復興特別所得税 終了令和29年(2047年)
令和8年度税制改正で課税期間が10年延長され、税率の内訳が組み替えられました

あわせて、令和9年(2027年)1月1日以後は税率の内訳が変わります。

  • 復興特別所得税の税率が2.1%から1.1%に引き下げられます。
  • 所得税額の1%を課す防衛特別所得税が新設されます。
  • 合計の上乗せ率は2.1%のままで変わりません。
上場株式等の譲渡益にかかる税率は2027年以後も変わらない2026年分まで 所得税15% + 復興特別所得税 2.1%15.315%2027年分以後 所得税15% + 復興 1.1% + 防衛 1%15.315%住民税5%を合わせた合計20.315% で変わらず
復興特別所得税が1%分減り、その分を防衛特別所得税が引き取るため、合計は2.1%のままです

上場株式等の譲渡益や配当にかかる税率は、2027年以後も所得税15.315%・住民税5%の合計20.315%で変わらないということです。負担が増えるわけではありませんが、源泉徴収票や計算明細書の内訳の表示が変わります。

国税庁防衛特別所得税及び復興特別所得税の源泉徴収のあらまし

国税庁No.3208 長期譲渡所得の税額の計算

外国税額控除は、所得税と復興特別所得税のそれぞれについて限度額を計算する仕組みです。防衛特別所得税が加わった後の限度額の扱いは、国税庁からの案内を待つ必要があります。

7. 法人で持つ場合と何が違うのか

海外の金融資産を個人ではなく法人で保有した場合、課税関係は次のように変わります。

  • 所得の区分がない。受取配当、利子、売却益のいずれも法人の益金となり、法人税等が課税されます。個人のような申告分離課税はありません。
  • 本業の損益と通算できる。本業が赤字で金融投資が黒字でも、その逆でも相殺されます。個人では切り捨てられる損失が、法人では活きることがあります。
  • 欠損金の繰越が10年。青色申告法人であれば、欠損金を最大10年間繰り越せます。個人の上場株式等の譲渡損失の繰越は3年です。
  • 所得を分散できる。家族を役員にして役員報酬を支払えば、所得を分けられます。ただし、職務の実態に見合った金額であることが前提です。

個人の申告分離課税は所得税15%・住民税5%の合計20%(復興特別所得税等を含めて20.315%)で固定されているのに対し、法人は所得の規模で税負担が変わります。総合課税の雑所得になるもの(暗号資産や登録のない業者とのFXなど)で大きな利益を見込むなら、法人のほうが有利になる場面もあります。一方、上場株式等の売却益が中心であれば、個人の申告分離課税のほうが低い負担で済むことが多くなります。

どちらが有利かは、利益の種類と金額、家族構成、将来の相続対策まで含めて比較する必要があります。設立してから戻すのは簡単ではないので、事前に試算してください。

8. 海外の利益は税務署に把握されるのか

「海外の利益は日本の税務署には分からない」という前提で申告しないのは、現在では通用しません。次の3つの仕組みが動いています。

  • CRS(共通報告基準)。各国の税務当局が非居住者の金融口座情報を自動的に交換する国際基準です。国内の金融機関は毎年4月30日までに特定の非居住者の口座情報を所轄税務署長に報告し、その情報が租税条約等に基づいて相手国と交換されます。海外の金融機関にある日本居住者の口座情報も、同じ経路で日本の国税庁に届きます。令和6年度税制改正で報告制度の見直しが行われ、改正後の制度は令和8年(2026年)から施行、令和9年(2027年)以後は改正後の制度に基づいて報告と交換が行われます。
  • 国外送金等調書。金融機関を通じた100万円を超える国外送金・受金について、金融機関が税務署に提出します。国税庁レポート2026によれば、令和6事務年度の提出枚数は923万枚です。
  • 国外財産調書。その年の12月31日時点で合計5,000万円を超える国外財産を持つ居住者(非永住者を除く)は、翌年6月30日までに提出します。提出していれば申告漏れがあったときの加算税が5%軽減され、提出がない・記載がない場合は5%加重されます。

国税庁共通報告基準(CRS)に基づく自動的情報交換に関する情報

国税庁No.7456 国外財産調書の提出義務

国税庁レポート2026(適正・公平な課税の確保)


やました君

海外資産の申告漏れは、調査の対象として重点が置かれている分野です。しかも国外財産調書の未提出が重なると加算税が加重されます。金額が大きい方ほど、申告と調書をセットで整えておくべきです。

9. まとめ

  • 日本の居住者(非永住者以外)は、海外の金融資産から得た利益もすべて日本で申告する。
  • 商品の種類で課税方式が変わる。上場株式等・特定公社債は申告分離課税、暗号資産・海外業者とのFX・為替差益は総合課税の雑所得が原則。
  • 円換算は取引を計上すべき日のTTMが原則。為替差益は外貨を使ったとき・円に戻したときに実現する。
  • 上場株式等の譲渡損失の損益通算と3年繰越は「金融商品取引業者等を通じた譲渡」が要件。国外の口座では使えないことがある。
  • 復興特別所得税は令和29年(2047年)まで。2027年からは復興1.1%+防衛1%となり、合計2.1%は変わらない。
  • 暗号資産は申告分離課税の導入が予定されているが、適用開始日も海外取引所の扱いも未確定。

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よくある質問

海外の証券会社で得た利益は、日本で確定申告が必要ですか?

必要です。日本の居住者(非永住者以外)は全世界の所得が日本の課税対象になります。国外の口座には日本の源泉徴収も年間取引報告書もないため、外国株式の配当や売却益などを自分で集計し、種類に応じて申告分離課税または総合課税で申告します。

外貨のまま持っている間の値上がりにも税金はかかりますか?

かかりません。外貨のまま口座に置いている間は評価差額にすぎず、その外貨を使って別の資産を買ったり円に戻したりした時点で所得として実現します。国税庁の質疑応答事例でも、外貨建預金を払い出して建物を購入した場合に、取得時のレートとの差額を所得として認識するとされています。

海外の証券口座で出た上場株式の譲渡損失は繰り越せますか?

使えるとは限りません。損益通算と3年間の繰越控除は「上場株式等を金融商品取引業者等を通じて譲渡したこと」が要件とされています。国外の証券会社がこれに当たらない場合は使えない可能性があるため、口座を開いている業者の登録状況を確認してから申告方針を決めてください。

暗号資産はいつから申告分離課税になりますか?

2026年9月時点では決まっていません。令和8年度税制改正の大綱で、特定暗号資産の譲渡等を20%(所得税15%・個人住民税5%)の申告分離課税とする方針が示されていますが、適用は金融商品取引法の改正法の施行日の属する年の翌年1月1日以後で、その施行日が未定です。当面は雑所得として集計してください。

2027年から株式の売却益にかかる税率は上がりますか?

上がりません。令和9年(2027年)1月1日以後は復興特別所得税が2.1%から1.1%に下がり、所得税額の1%を課す防衛特別所得税が新設されます。上乗せ分の合計は2.1%のままで、上場株式等の譲渡益は所得税15.315%・住民税5%の合計20.315%で変わりません。

<注記>この記事は、海外投資をされている個人の方や、その申告を担当される方に向けて、制度の全体像を分かりやすく説明することを目的としています。一覧表は代表的な取扱いを示したもので、商品の設計や取引の相手によって結論が変わります。個別の判断については、顧問税理士または当事務所にご相談ください。記載内容は2026年9月時点の法令等に基づいています。